八犬継承奇譚~封印の珠と復活の怨霊~

厳島。

古くから神霊が集うこの島は、かつて陰陽師たちが死者の霊を供養する場として使っていた。
だが、今はその伝承すら忘れられ、封じられた記録は風化しつつある。

「ここが、転生の座標の一つ?」

千龍が静かに問いかけると、美咲が頷いた。

「えぇ。玉梓が黄泉城で敗れ、魂が霊域に散った後、幾つかの供養の地にその残滓が移されていった。厳島はそのひとつ。そして、転生儀式の式文が一時的にここに保管された形跡がある」

玲音が手にした古文書の写しを広げる。

「“月下、白峯の社に於いて、血脈の印が宿る”。ここの北側、“白峯神社”の裏が、それに該当する場所だな」

島を巡りながら、一行は村人たちに聞き込みを続ける。

「顔のない女が……社の前に立ってた……」

「最近……夢の中に……月に照らされた女の影が出てくるんです……」

「赤い珠の話……昔、村の巫女が警告していたのに、もう誰も……」

不穏な証言が次々と重なる中、美咲は確信した。

(誰かが、ここで転生術の準備をしていた)

白峯神社へと向かう石段を登る途中で、ふと風が止まる。

玲音が周囲を見渡した。

「月が、変だ」

その瞬間、空に昇った満月が紅く染まり、辺りに血のような霞が広がる。

「皆、目を逸らして!」

だが遅かった。

直人が頭を押さえ、呻き出す。

「血が……沸騰するような……熱が……!」

白夜が駆け寄るが、突然辺りに結界が張られ、音が歪む。

そして、現れた。