八犬継承奇譚~封印の珠と復活の怨霊~

「玲音、聞こえる?」

美咲と式たちの声が、玲音の意識の奥へと降りていく。

「あなたの中にいる囁き。それは、あたではありません。ですが、それを引き寄せたのは、あなたの強さなのです」

玲音の意識の中に、美咲たちの声が届く。

《強さ……? 俺が……?》

《はい。智の珠は、すべてを読み解く力。しかし時に、全てを知ろうとする弱さでもあるのです》

《でも、あなたは違います。仲間のためにその力を使っている》

《だから負けないで。あなたの意志で、因縁を断ち切って》

玲音の中で、黒い手が珠に触れようとしていた。

《お前も、また第九に還れ》

その声を、玲音は振り払った。

「……俺は……犬坂玲音だ!」

「そしてこれは、智の珠。俺の意志だ!!」

その瞬間、珠が光を放ち、黒い手を霧散させた。
光と共に、玲音が地面に膝をついて戻ってくる。

「はぁ……はぁ……」

「玲音!」

美咲が駆け寄り、手を添える。

「ありがとう、助かった」

玲音が微笑む。

「俺、ちょっと迷いかけてた。強くなればなるほど……全部が見えてしまって……仲間の未来も、敵の計略も。なのに、止められない自分が怖かった」

美咲が静かに頷く。

「でも、あなたはちゃんと止めた。あの呪いも、第九の因の囁きも」

玲音が立ち上がり、智の珠に手を当てる。

「見えるだけじゃ意味はない、未来は変えられるからこそ、戦うんだな」

八犬士たちが安堵の息をつく。

その時、千龍がぽつりと言った。

「第九の因は、俺たちの中にも入り込めるってことか」

「えぇ、でも玲音は勝った。私たちが繋がっていれば、負けない」

美咲が笑う。

だが、遠くでまた、黒い風が吹いた。
第九の因、扇谷智成の気配は着実に近づいていた。