八犬継承奇譚~封印の珠と復活の怨霊~

霧が晴れ、銅青の姿が完全に消えた後。

一同は静けさの中、互いの無事を確認し合っていた。

「怪我はないか?」

千龍が仲間たちを見回す。

「俺は平気だ」と蒼真が首を回し、「俺も問題ない」と白夜が応じる。

しかし——。

「……っ、あ……!」

玲音が突然、その場に膝をついた。

「玲音!? どうした!?」

蓮が駆け寄る。

玲音の瞳が、かすかに赤く濁っていた。
手には黒い痣のような紋様が浮かび上がり、指先から黒煙のような気配が滲み出している。

「これは……銅青の術式が……!」

美咲が護符を展開し、玲音の体に浮かぶ術痕を読み取る。

「残留呪気が……玲音の珠に干渉してる……!」

智の珠が、かすかに脈動し、共鳴するように周囲の珠が震えた。

「俺の……中に……誰かが……囁いてる……」

玲音が額を押さえる。顔が青白く、額には汗が滲んでいた。

「……やめろ、俺は……お前じゃない……!」

「玲音! しっかりしろ!」

景臣が駆け寄ろうとするが、美咲が制止する。

「待って、下手に触れると因を刺激する。これは、第九の意志が試している!」

白火と炎夜が緊張した様子で玲音の周囲を回る。華蓮が低く唸った。

「美咲様、早く境界結界を!」

「わかってる。式神陣・三尾陰核護法!」

美咲が五枚の符を取り出し、玲音の周囲に素早く配置。

「白火・炎夜・華蓮、陣を構えて!智珠護結・封陰の儀!」

三尾の狐が玲音の周囲に炎の輪を描き、陰陽陣が発動する。
美咲の掌から光の糸が伸び、玲音の体に纏わる黒の痣へと絡みついていく。