八犬継承奇譚~封印の珠と復活の怨霊~

相模国にある陰咲の里は、深い山あいにひっそりと佇んでいた。
そこで、一人の少年が名刀を振るいながら修行に励んでいる。

少年の名は犬塚千龍。
幼い頃に両親を亡くした千龍は、祖父であり、かつての八犬士・犬塚信乃に育てられた。

信乃が千龍に託したのは、伝説の名刀〈村雨〉。
この刀は、妖を斬り、穢れを祓う霊刀として知られている。

そして数日後。

陽が落ち、里に静けさが広がるころ。
突然山奥から、低く唸るような不気味な声が響いた。

「今のは……何だ……?」

稽古を終えた千龍は、ちょうど里へ戻ろうとしていた。
その異変は、確実に“何か”の目覚めを告げていた。

「爺様、何の音だ?」

振り返ると、信乃も険しい表情を浮かべていた。

「来たか……」

信乃は深く息を吐き、手にしていた古びた巻物を広げる。

その時、里の外れに黒い影が現れた。
巨大な怨霊が、うごめく瘴気をまとい、赤く光る眼が千龍を睨みつける。

怨霊は大きく口を開け、千龍に襲いかかろうとした。

その瞬間、一枚の札が怨霊の胸元にべたりと貼りついた。
鋭い風が突風のように吹くと、怨霊の動きが一瞬止まり、苦悶の表情が浮かんだ。