ここまで読んでくださりありがとうございます。

 作者の宮野 智羽です。

 早速の裏話なのですが、本作は元々10万字以上あった物語を修正して短くしたものです。

 本当はもっと日常の描写、文化祭や修学旅行まで幅広く描いた上で、冬の海で海の死を認めるという展開でした。何故短くしたかというと、当時応募していたコンテストの募集要項に則った結果です。結局落選してしまったのですが、これはこれで完結したし残そうとしたのが本作の経緯です。


 以下、ちょっとした解説です。実は色々混ぜていました。

 1つ目は夏の学校で海がぼーっとしている描写が多い理由についてです。

 ぼーっとしていたのは、翼の心に余裕がなくなり動いている海をイメージできなくなったからです。
 スタンドを立てた自転車を漕いでいる描写は風でタイヤが回っただけなので人的な力が働いたわけではありません。学校に止めてある自転車は案外鍵がかかっていないことが多いため、夏場はよく風で回っているイメージです。
 海は翼の完全な幻覚であるが故の描写でした。


 2つ目は周囲から見た翼についてです。

 最初の方で翼が「だってこんな状況で集中できないっすよ」と先生に言う場面があります。翼は『外で女子が体育をしていて気になるから』という意味で言いましたが、先生は『海が亡くなって辛いから』という意味で解釈し、怒ることができなかったのです。
 他のクラスメイトとの会話でも、皆が気を遣ったよそよそしい感じなのは、親友の海を亡くしてしまった翼への配慮です。でも、翼には海が見えていました。だから翼としては(変なの)ぐらいにしか思っていません。


 3つ目は海の性別です。
 実は、海の性別は意図的に書きませんでした。きっと鋭い方は読んでいて違和感があったと思います。ずっと濁しに濁していましたし、私としてもここで公表するつもりはありません。海は海という存在でいいのかなと思っています。


 次にタイトルの説明をしたいと思います。

 花 = 海の命   (花が散る=海が亡くなる)
 青い春 = 青春
 何の意味があるのだろうか = 逆接で「何の意味があるのだろうか。いや無い」

 となります。


 繋げると「海が死んでしまった青春に何の意味があるのだろうか。いや無い」となります。


 これは翼が海が亡くなったという事実から目を背ける直前に呟いた言葉をイメージしました。



 翼は、病気で生きられなかった海をどこまでも連れていくための翼となり、

 海は、どんな翼でも受け止めるための大きく広い海となりました。


 そんな2人のお話でした。