ミーンミンミンミーン……
ああ、退屈だ。
少し蒸し暑い電車内で、汗ばんだ手で吊り革を握って移り行く景色を眺める僕の思考はそれで埋め尽くされていた。
「今日プリ撮りいかん?」
「今日はカラオケでしょ」
そんな会話をする女子中学生を見て、羨ましい、と思ってしまう。
進学校に通っている僕はつい最近、三者面談が行われ、このままの成績では夢である医者になることは難しい、と先生にハッキリ言われてしまった。
小学生の頃からずっと憧れていた医者。
どうしてもなりたくて中学は部活も入らず、碌な青春はせずに勉強だけしてきた。
その努力が実ったのかは知らないが、今通っている進学校に通うことができた。
現実は無常だ。
親にも反対され、「医者になりたい」と言う思いがすっかり消えてしまった今、僕がすることはバイトと病気の父の見舞いに行く事ぐらいだった。
部活も今更入れないし、熱中する事もない。
そうこう考えているうちに、父のいる大学病院の最寄駅に着いた。
汗を拭いているおじさん、ジャラジャラとキーホルダーをこれでもかというぐらいスクールバックにつけている女子高生など、電車から降りる人は様々だ。
そこから少し歩いた先が大学病院。
秋や冬ならまだ楽だが、今は夏。
ミンミンゼミが必死に鳴いていて、どこからか風鈴がチリンと鳴っていて…
という具合の真夏である。
少し歩くだけでも汗ばんでしまう。
汗を拭きながら病院に入り、受付をして、面会時間を確認すると後三十分後らしい。
時間を潰すような場所が近くにはなかった為、僕は前から気になっていた屋上に行くことにした。
