スラリと伸びた手足と透明感あふれる白い肌。
流行のメイクで彩られた愛らしい双眸と、明るく染めた艶やかな長い髪。

欠点の無いパーフェクトな容姿を前に、緊張で体が硬直した。

「は、はい、何でしょう?」
「愛原さんって、星崎君と同じ中学だったんでしょ? 仲良かったの?」
「え?」

クラスメイトの唐突な質問に、頭の中が混乱する。

私と星崎君が同じ中学校!?
あんな人気者、同級生にいたかな?

記憶に新しい中学時代を思い返してみるが、大きなイベント以外何も思い出せなかった。
そもそも不登校気味だったから、同級生どころか隣の席の子すら覚えていない。
 
ごめん、星崎君、あとで卒アル確認するね……。
 
何の実りも無かった中学時代を思い出して気を落としていると、綾瀬さんの苛ついた舌打ちが聞こえた。

「ちょっと愛原さん、聞いてる?」
「あ、ごめん、えっと、星崎君とは話した事なくて」
「なんだ、そうなの……」

綾瀬さんは急に穏やかな口調になり、安堵の表情で去って行く。
その後ろ姿は嬉しそうに弾んでいた。

何か、誤解をされていたようだ。
どうして私なんかの事を気にするのだろう。

ご機嫌で去って行った綾瀬さんは、一軍女子の輪に加わると、そっと私を一瞥する。
 
「星崎君とは話した事無いそうよ」

小声で言ったつもりだろうけれど、綾瀬さんの声は通りが良く、すんなりと私の耳に届いた。
少し距離をとってみたものの、一軍女子達は私に聞こえるように大声で話し始める。
 
「ほらね、ありえないって言ったでしょ。あんな地味な子を相手にする訳ないって」
「帽子は派手だけどね、あはは」

終業を知らせるチャイムすらかき消してしまう、嘲るような声と笑い。
胸の奥がチリチリした。

入学してからもうすぐ半年。
平穏無事に卒業するのが目標だったのに、昨日から心が騒がしい。

分かってる。
このままじゃダメだって事。

でも、どうすれば――

答えなんて見つからない。

何も考えたくない。

私は逃げるように体育館を後にした。



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