折れそうなほど華奢で小さな愛原と、筋肉質で健康的な家主。
一見、対照的な二人だが、大きな瞳と幼い面立ちはどことなく雰囲気が似ていた。
男の子のように切りそろえられたショートヘアの家主も、愛原のように肩まで髪を伸ばせばそっくりになるだろう。
親戚なのか……?
だとすれば、愛原がここにいる事も納得だ。
「ねぇ、みっちゃん。どうして大神くんがここにいるの!?」
一人推理に勤しむ俺を、愛原は怪訝そうに見つめながら家主の腕をゆする。
だいぶ嫌われてしまったようだ。
「あら、大神君と友達なの?」
「ううん、話した事は無いけど、同じクラスで……」
「そうだったの。それは良かったわ」
「よ、良かったって何が?」
「大神くんのお母さんとは古い友人でね、高校を卒業するまで下宿させる事にしたのよ」
「下宿!? どうして!?」
「実家から通うにはちょっと遠いのよ。せっかく早起きしても、授業中に寝ちゃったら意味ないでしょ」
家主の発言は、愛原では無く俺に向けられた説教に聞こえた。
居心地の悪さに苦笑する事しか出来なかったが、なぜか俺以上に愛原が何とも言えない表情を作っている。
「……そう、なんだ」
完全に俺を拒絶している反応。
だいぶどころか本格的に嫌われているようだ。
そんな愛原の様子を知ってか知らずか、家主は買い物袋からニンジンやジャガイモを取り出し、品定めしている。
「よし、カレーにしよう!」
「カレー……好きです」
腹の虫を泣かせた俺が弾けるように反応すると、家主が優しく微笑んだ。
――が、愛原は見事なまでの無表情。
そこは笑って欲しかった……。
まぁ、仕方ないか。
家主は愛原の様子を横目で確認しながらも、淡々と夕飯の準備を進める。
「鈴も夕飯食べて行くでしょ? 手伝ってくれる?」
「ごめん、みっちゃん。私は野菜を届けに来ただけだから帰る! じゃあね」
「え? ちょっと――」
「あ! 靴!」
愛原はパタパタと戻って来ると、縁側に飛び降りダイフクを一撫でして去って行った。
「変な子ね。いつもは日が暮れるまでダイフクと遊んでから帰るのに」
「すみません、俺が驚かせたから」
「鈴に……何かしたの?」
さっきまでの笑顔はどこへやら、家主は包丁を手に俺を睨む。
「い、いえ、何も、昼寝してただけです」
「あぁ、そりゃそうよね、一人暮らしのお婆ちゃんの家に行ったら、若い男が寝てたなんて――ふふ、赤ずきんちゃんみたい」
「そうですね――って、あの、今、お婆ちゃんって……」
「あら、言ってなかったわね。鈴は私の孫よ」
「は……え?」
目の前にいる女性はとても若々しく健康的で、お婆ちゃんには程遠い容姿をしている。愛原が「みっちゃん」と呼ぶのも納得できた。
いったい何歳なのだろう。
「あ、そうそう、私の事、オバサンとかお婆ちゃんって呼んだら罰金だからね」
包丁の切先が俺に向けられた。
聞かない方が身の為のようだ。
「あ、あの、じゃあなんて呼んだらいいですか?」
「ルミで良いわよ。鈴の事よろしくね、大神君」
「はい……」
果たして、よろしくしてもらえるのか。
明日が不安になった……。
**********
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一見、対照的な二人だが、大きな瞳と幼い面立ちはどことなく雰囲気が似ていた。
男の子のように切りそろえられたショートヘアの家主も、愛原のように肩まで髪を伸ばせばそっくりになるだろう。
親戚なのか……?
だとすれば、愛原がここにいる事も納得だ。
「ねぇ、みっちゃん。どうして大神くんがここにいるの!?」
一人推理に勤しむ俺を、愛原は怪訝そうに見つめながら家主の腕をゆする。
だいぶ嫌われてしまったようだ。
「あら、大神君と友達なの?」
「ううん、話した事は無いけど、同じクラスで……」
「そうだったの。それは良かったわ」
「よ、良かったって何が?」
「大神くんのお母さんとは古い友人でね、高校を卒業するまで下宿させる事にしたのよ」
「下宿!? どうして!?」
「実家から通うにはちょっと遠いのよ。せっかく早起きしても、授業中に寝ちゃったら意味ないでしょ」
家主の発言は、愛原では無く俺に向けられた説教に聞こえた。
居心地の悪さに苦笑する事しか出来なかったが、なぜか俺以上に愛原が何とも言えない表情を作っている。
「……そう、なんだ」
完全に俺を拒絶している反応。
だいぶどころか本格的に嫌われているようだ。
そんな愛原の様子を知ってか知らずか、家主は買い物袋からニンジンやジャガイモを取り出し、品定めしている。
「よし、カレーにしよう!」
「カレー……好きです」
腹の虫を泣かせた俺が弾けるように反応すると、家主が優しく微笑んだ。
――が、愛原は見事なまでの無表情。
そこは笑って欲しかった……。
まぁ、仕方ないか。
家主は愛原の様子を横目で確認しながらも、淡々と夕飯の準備を進める。
「鈴も夕飯食べて行くでしょ? 手伝ってくれる?」
「ごめん、みっちゃん。私は野菜を届けに来ただけだから帰る! じゃあね」
「え? ちょっと――」
「あ! 靴!」
愛原はパタパタと戻って来ると、縁側に飛び降りダイフクを一撫でして去って行った。
「変な子ね。いつもは日が暮れるまでダイフクと遊んでから帰るのに」
「すみません、俺が驚かせたから」
「鈴に……何かしたの?」
さっきまでの笑顔はどこへやら、家主は包丁を手に俺を睨む。
「い、いえ、何も、昼寝してただけです」
「あぁ、そりゃそうよね、一人暮らしのお婆ちゃんの家に行ったら、若い男が寝てたなんて――ふふ、赤ずきんちゃんみたい」
「そうですね――って、あの、今、お婆ちゃんって……」
「あら、言ってなかったわね。鈴は私の孫よ」
「は……え?」
目の前にいる女性はとても若々しく健康的で、お婆ちゃんには程遠い容姿をしている。愛原が「みっちゃん」と呼ぶのも納得できた。
いったい何歳なのだろう。
「あ、そうそう、私の事、オバサンとかお婆ちゃんって呼んだら罰金だからね」
包丁の切先が俺に向けられた。
聞かない方が身の為のようだ。
「あ、あの、じゃあなんて呼んだらいいですか?」
「ルミで良いわよ。鈴の事よろしくね、大神君」
「はい……」
果たして、よろしくしてもらえるのか。
明日が不安になった……。
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