愛原の事が好きなのか? と、問いかけそうになり、慌てて言葉を飲み込んだ。
星崎は俺の気持ちをくみ取ったかのように照れ笑いを浮かべる。

「ははは、そんなんじゃないよ。ただ、こんなふうに笑えるのに、どうしていつも一人なのかなって気になってたんだ」
「それはまぁ、そうかもな……」

星崎の持つスマホを横目で覗きこんだ。
確かに、この笑顔を見せられたら、俺でも疑問に思うだろう。

「だからさ、同じ高校に進学するって知った時、話しかけるプランを色々考えてたんだよ。それなのに――」

そこまで言うと、星崎は不満そうに俺を見つめた。

「――ん?」
「まさかの近寄るなオーラに戸惑ってる間に、お前に先を越されたって訳」

冗談交じりで俺を睨みつける星崎。
どこか恥じらっているようにも見える。

「なんか……ごめん」

勢いで謝ると、星崎はクスッと笑って立ち上がった。

「冗談だよ冗談。本気にするなよ」
「あ、あぁ……」
「んじゃ、俺は先に戻る。じゃーな」

星崎は陽気な声で別れを告げると、颯爽と屋上を去って行く。
何だか逃げられたような気がした。

再び一人になった屋上に、卵の殻を剥く音だけが響く。
空腹を満たすには少々物足りない昼食だが、星崎の思いやりで充分腹は満たされた。

良い奴だな、星崎……。

やっぱり、愛原に必要なのは俺じゃなくて星崎だ。

俺は信用に値する人間じゃないから――。



**********
**********