「友達の為ってのは本当だし後悔はしてない。けど、相手を怪我させた事は後悔してる。だから武勇伝じゃない――と、俺は思う」
たどたどしい言葉。
自分で黒歴史と言うくらいだ、本当は話したくないのだろう。
嫌な思いをさせてしまったと思ったのか、みっちゃんは大盛りご飯を大神君の前に力強く置いた。
「気にし過ぎ! 相手の子達は元気になったみたいだし、武勇伝で良いと思うけどねー」
「確かに、アイツらは元気にしてるって聞いた。けど――」
「あ、そうだったわね。お友達、いなくなっちゃったんだっけ」
みっちゃんの問いかけに、大神君は小さく頷く。
山盛りのご飯を見つめる瞳は真剣そのもの。
ただ事では無い雰囲気だ。
「どこかに、引っ越したの?」
そんな訳がない事は表情を見て分かっていたけど、他に真実を導き出せる言葉が見つからず、遠回りしてみる。
大神君はゆっくりと顔を上げた。
「分からない。あの日以来、会えてないから」
「そう……なんだ……」
喧嘩の話をしていた時よりも暗い表情。
大神君の後悔は、喧嘩よりも友達を失った事へ向けられているような気がした。
静まり返る食卓。
二人そろって俯いていると、
「ちょっとー、せっかくのお鍋なのにしんみりしないでよ!」
静寂を打ち消すみっちゃんの声と共に、土鍋の蓋が解放された。
吸い寄せられるように、鍋に向かって鼻を突き出す大神君。
「ふふ、もう食べられるわよ」
みっちゃんの許可が下りると、大神君はすぐさま手を合わせた。
私も真似して手を合わせたが、鍋に箸を伸ばす気になれず、二人の姿をただ黙って見つめる。
見かねたみっちゃんが、私のお皿にどんどんとお肉を運び始めた。
「み、みっちゃん、私、そんなに食べられないよ」
「育ちざかりが何言ってるのよ、大神君を見習いなさい」
「大神君は男の子だし……」
言いながら覗き見た大神君は、無言で大盛りご飯と戦っていた。
見習って私も箸を握り直すが、なかなか食が進まない。
お腹は空いているはずなのに、胸がいっぱいなのだ。
みっちゃんと星崎君の関係。
大神君の噂話。
噂を信じてしまった事への罪悪感。
結局、私は数口食べただけで箸を置いた。
すぐさまみっちゃんが保存容器を持って来る。
「食べないなら持って帰りなさい。パパさんの分も一緒に」
「ありがとう。ごめんね……」
私が謝ると、みっちゃんは優しく微笑んだ。
何もかもお見通しなのだろう。
大神君も私を気にしている様子はあったが、そこに会話が生まれる事は無く、静かに時が過ぎて行った。
☆☆☆
たどたどしい言葉。
自分で黒歴史と言うくらいだ、本当は話したくないのだろう。
嫌な思いをさせてしまったと思ったのか、みっちゃんは大盛りご飯を大神君の前に力強く置いた。
「気にし過ぎ! 相手の子達は元気になったみたいだし、武勇伝で良いと思うけどねー」
「確かに、アイツらは元気にしてるって聞いた。けど――」
「あ、そうだったわね。お友達、いなくなっちゃったんだっけ」
みっちゃんの問いかけに、大神君は小さく頷く。
山盛りのご飯を見つめる瞳は真剣そのもの。
ただ事では無い雰囲気だ。
「どこかに、引っ越したの?」
そんな訳がない事は表情を見て分かっていたけど、他に真実を導き出せる言葉が見つからず、遠回りしてみる。
大神君はゆっくりと顔を上げた。
「分からない。あの日以来、会えてないから」
「そう……なんだ……」
喧嘩の話をしていた時よりも暗い表情。
大神君の後悔は、喧嘩よりも友達を失った事へ向けられているような気がした。
静まり返る食卓。
二人そろって俯いていると、
「ちょっとー、せっかくのお鍋なのにしんみりしないでよ!」
静寂を打ち消すみっちゃんの声と共に、土鍋の蓋が解放された。
吸い寄せられるように、鍋に向かって鼻を突き出す大神君。
「ふふ、もう食べられるわよ」
みっちゃんの許可が下りると、大神君はすぐさま手を合わせた。
私も真似して手を合わせたが、鍋に箸を伸ばす気になれず、二人の姿をただ黙って見つめる。
見かねたみっちゃんが、私のお皿にどんどんとお肉を運び始めた。
「み、みっちゃん、私、そんなに食べられないよ」
「育ちざかりが何言ってるのよ、大神君を見習いなさい」
「大神君は男の子だし……」
言いながら覗き見た大神君は、無言で大盛りご飯と戦っていた。
見習って私も箸を握り直すが、なかなか食が進まない。
お腹は空いているはずなのに、胸がいっぱいなのだ。
みっちゃんと星崎君の関係。
大神君の噂話。
噂を信じてしまった事への罪悪感。
結局、私は数口食べただけで箸を置いた。
すぐさまみっちゃんが保存容器を持って来る。
「食べないなら持って帰りなさい。パパさんの分も一緒に」
「ありがとう。ごめんね……」
私が謝ると、みっちゃんは優しく微笑んだ。
何もかもお見通しなのだろう。
大神君も私を気にしている様子はあったが、そこに会話が生まれる事は無く、静かに時が過ぎて行った。
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