「ぶゆうでん……だと？」
　
そんな大それたものでは無い。
だが、星崎は生き生きとした表情で首を縦に振った。

「いやー、感動だわ。漫画でしか見た事無いもんな、ヤンキーって」
「待て、俺はヤンキーじゃない」
「似たようなもんだろ」
「全然違う」
「じゃあ、どう違うのかじっくり聞かせてもらうじゃないか」
「は？」

顔を顰める俺に、星崎は企むように笑いながら詰め寄って来る。

「俺は今からお前の武勇伝を聞きながら帰る。よし、行くぞ」
「あ、おい！」

星崎は俺のカバンを奪い取り、楽しそうに教室を飛び出した。

「早く帰らないと鍋が無くなるぞー」　

廊下から楽しげに俺を呼ぶ星崎。
行き交う生徒達が俺と星崎を訝しげに見ている。
友達としては不釣り合いな雰囲気。
　
当然の反応だ。

星崎は嫌では無いのだろうか。
俺が怖くは無いのだろうか。
戸惑う俺とは裏腹に、星崎は無邪気な笑顔で待ちぼうけしている。
嬉しい反面、仲良くなる事への恐怖心が湧いた。
　
いつか星崎も、俺を大神と呼ばなくなる日がきっと来る。
それが分かっていて仲良くするのは、流石の俺でも心が痛い。

星崎と一緒に帰るのは今日だけにしよう……。
　
今日一日だけの友達。



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