「楽しかったね」
カラオケ店を出て、ヨルは大きく伸びをする。
心なしか声がかさついている気がする。俺も歌い方なんて気にしなかったから、ヨル以上に声が枯れている。こんなに全力で歌ったのは初めてで、カラオケを人生で一番楽しんだようにも思える。
「お腹減ったね。コンビニの肉まんが食べたいんだけど、一緒にどう?」
「いいな。賛成」
フードはなにも頼まず、ドリンクバーだけで数時間も過ごしていたから腹が減っている。肉まんも久しく食べていないから反対する理由がなかった。
コンビニに入ると、すぐにホットスナックのコーナーに目がいく。フライドチキンやアメリカンドッグ、焼き鳥といったすぐに腹を満たしてくれる品々が並んでいる。
違う、今は肉まんだ。ピザまんやあんまんにも目を奪われたが、今度個人的に買おう。
ヨルはホットココアと肉まんを買っていた。ココアの特有の甘さと肉まんのしょっぱさの組み合わせは果たして合うのだろうか。
なんてことを考えながら俺もレジに並んでいたところで、会計を終えたヨルが俺の歩みを止めた。
「朝日はあっちのコンビニで買ってきて」
謎のルールに俺は「は?」と思わず声が漏れ出た。
「なんでだよ」
「食べ比べってやつだよ」
そういうことか。それなら最初から言ってくれればいいものを。
コンビニを移動し、改めてレジに並ぶ。するとヨルが俺の横に並んできた。次はなんだ。
「声が枯れたなら、喉を殺菌してくれる緑茶がおすすめだよ」
温かい緑茶が入ったペットボトルを渡してきた。受け取ると、ほんのりとした温かさが俺の手に伝わる。
「ありがとな」
「どういたしまして」
平然と返せるあたり、まだ二日目だがヨルのペースに慣れ始めてきた証拠かもしれない。
会計を終えてコンビニを出る。寒さが肌に当たるが、手の中の肉まんと緑茶が温かいおかげで寒さをなんとか乗り越えられた。
「今日は公園で食べようよ」
今日も昨日と同様にコンビニの前で屯するかと思いきや、ヨルからそんな提案をされた。昨日はコーヒーだけだったが、今日は肉まんという食事がある。駅前のコンビニで堂々と食事をするのも違う気がするな。
地図アプリで調べ、すぐ近くに公園があったから移動する。
公園はこぢんまりとしていて、ベンチとブランコとすべり台しかなかった。点々と置かれている遊具を街灯が静かに照らしていた。昼間なら遊具で元気に遊ぶ子供がいるのだろうが、夜で誰もいないせいか寂しさが感じられた。
ベンチに腰掛けて荷物を置く。
「いただきます」
温かい緑茶で喉を潤してから肉まんにかぶりついた。ふわふわした饅頭部分と、中にぎっしりと詰まった肉が口の中で合わさって最高のハーモニーを奏でている。
俺の横でヨルも肉まんを食べ始めていた。一口目で肉まで届いていなかったようで、二口目をすぐにかじっていた。肉まんを味わえた喜びからか、咀嚼しながら幸せそうな声が漏れ出ていた。
「冬といえば肉まんだよね。あんまんとどっちがいいかって聞かれたら迷わず肉まんって答えちゃう」
「俺も肉まん派だな。やっぱ肉だろ」
「だよね。甘いのもいいけど肉まんの方が食べてるーって感じするもん」
それはきっと肉や他の具材がぎっしり入ってるからだろうな。あんこだけのあんまんよりは満足感が圧倒的に違う。なんてことを言うとあんまん派に怒られそうだ。
肉まんを食べながらヨルは空を見上げる。俺もヨルに倣って夜空を見る。今日も今日とていい天気だ。冬の澄んだ空気もあって星がよく見える。
「いつかおでんの食べ比べもしてみたいんだよね。結構コンビニで味違うらしいよ」
「あぁ、出汁の味が違うとかよく言うよな」
食べながら他の食べ物の話をするなんて、さては腹が減っているな。肉まんだけじゃ足りなかったんじゃないか。
「あーん」
そんな声がしてヨルの方を向くと、ヨルが小さく口を開けていた。
ヨルの言葉と行動がなにを意味するか分からないほど、俺も馬鹿じゃない。
俺はそっと肉まんをヨルの口に持っていく。口を開けていたヨルは小さい口で肉まんにかぶりついた。
「ん、美味しい。具のゴロゴロしてる感じがちょっと違うかも」
美味しそうに感想を述べるから、見ているこっちもつられて幸せな気持ちになる。やっぱり食事はいい気分で食べたいからな。
「朝日もいる?」
「……じゃあ、もらおうかな」
「はい、あーん」
笑顔で肉まんを差し出される。せっかく差し出してくれたのだからと、俺は肉まんをかじる。ヨルに言われた通り、俺が買った肉まんとはまた違う味がした。コンビニによって結構違うのだと、飲み込みながら俺は一人納得した。
元カノとは互いに食べているものを交換したことはあるが、あーんはしたことがない。
別に間接キスが嫌なわけではない。まさかラブラブなカップルがやるようなことを、付き合って二日目のカップルがするとは思わなかっただけだ。ヨルが満足そうだから、なにも言わずに胸の内に秘めておくことにする。
あっという間に俺もヨルも肉まんを完食した。口直しに緑茶を飲んで口の中をスッキリさせる。温かい食べ物と飲み物のおかげで冬の公園にいても寒さをあまり感じなかった。
カラオケ店を出て、ヨルは大きく伸びをする。
心なしか声がかさついている気がする。俺も歌い方なんて気にしなかったから、ヨル以上に声が枯れている。こんなに全力で歌ったのは初めてで、カラオケを人生で一番楽しんだようにも思える。
「お腹減ったね。コンビニの肉まんが食べたいんだけど、一緒にどう?」
「いいな。賛成」
フードはなにも頼まず、ドリンクバーだけで数時間も過ごしていたから腹が減っている。肉まんも久しく食べていないから反対する理由がなかった。
コンビニに入ると、すぐにホットスナックのコーナーに目がいく。フライドチキンやアメリカンドッグ、焼き鳥といったすぐに腹を満たしてくれる品々が並んでいる。
違う、今は肉まんだ。ピザまんやあんまんにも目を奪われたが、今度個人的に買おう。
ヨルはホットココアと肉まんを買っていた。ココアの特有の甘さと肉まんのしょっぱさの組み合わせは果たして合うのだろうか。
なんてことを考えながら俺もレジに並んでいたところで、会計を終えたヨルが俺の歩みを止めた。
「朝日はあっちのコンビニで買ってきて」
謎のルールに俺は「は?」と思わず声が漏れ出た。
「なんでだよ」
「食べ比べってやつだよ」
そういうことか。それなら最初から言ってくれればいいものを。
コンビニを移動し、改めてレジに並ぶ。するとヨルが俺の横に並んできた。次はなんだ。
「声が枯れたなら、喉を殺菌してくれる緑茶がおすすめだよ」
温かい緑茶が入ったペットボトルを渡してきた。受け取ると、ほんのりとした温かさが俺の手に伝わる。
「ありがとな」
「どういたしまして」
平然と返せるあたり、まだ二日目だがヨルのペースに慣れ始めてきた証拠かもしれない。
会計を終えてコンビニを出る。寒さが肌に当たるが、手の中の肉まんと緑茶が温かいおかげで寒さをなんとか乗り越えられた。
「今日は公園で食べようよ」
今日も昨日と同様にコンビニの前で屯するかと思いきや、ヨルからそんな提案をされた。昨日はコーヒーだけだったが、今日は肉まんという食事がある。駅前のコンビニで堂々と食事をするのも違う気がするな。
地図アプリで調べ、すぐ近くに公園があったから移動する。
公園はこぢんまりとしていて、ベンチとブランコとすべり台しかなかった。点々と置かれている遊具を街灯が静かに照らしていた。昼間なら遊具で元気に遊ぶ子供がいるのだろうが、夜で誰もいないせいか寂しさが感じられた。
ベンチに腰掛けて荷物を置く。
「いただきます」
温かい緑茶で喉を潤してから肉まんにかぶりついた。ふわふわした饅頭部分と、中にぎっしりと詰まった肉が口の中で合わさって最高のハーモニーを奏でている。
俺の横でヨルも肉まんを食べ始めていた。一口目で肉まで届いていなかったようで、二口目をすぐにかじっていた。肉まんを味わえた喜びからか、咀嚼しながら幸せそうな声が漏れ出ていた。
「冬といえば肉まんだよね。あんまんとどっちがいいかって聞かれたら迷わず肉まんって答えちゃう」
「俺も肉まん派だな。やっぱ肉だろ」
「だよね。甘いのもいいけど肉まんの方が食べてるーって感じするもん」
それはきっと肉や他の具材がぎっしり入ってるからだろうな。あんこだけのあんまんよりは満足感が圧倒的に違う。なんてことを言うとあんまん派に怒られそうだ。
肉まんを食べながらヨルは空を見上げる。俺もヨルに倣って夜空を見る。今日も今日とていい天気だ。冬の澄んだ空気もあって星がよく見える。
「いつかおでんの食べ比べもしてみたいんだよね。結構コンビニで味違うらしいよ」
「あぁ、出汁の味が違うとかよく言うよな」
食べながら他の食べ物の話をするなんて、さては腹が減っているな。肉まんだけじゃ足りなかったんじゃないか。
「あーん」
そんな声がしてヨルの方を向くと、ヨルが小さく口を開けていた。
ヨルの言葉と行動がなにを意味するか分からないほど、俺も馬鹿じゃない。
俺はそっと肉まんをヨルの口に持っていく。口を開けていたヨルは小さい口で肉まんにかぶりついた。
「ん、美味しい。具のゴロゴロしてる感じがちょっと違うかも」
美味しそうに感想を述べるから、見ているこっちもつられて幸せな気持ちになる。やっぱり食事はいい気分で食べたいからな。
「朝日もいる?」
「……じゃあ、もらおうかな」
「はい、あーん」
笑顔で肉まんを差し出される。せっかく差し出してくれたのだからと、俺は肉まんをかじる。ヨルに言われた通り、俺が買った肉まんとはまた違う味がした。コンビニによって結構違うのだと、飲み込みながら俺は一人納得した。
元カノとは互いに食べているものを交換したことはあるが、あーんはしたことがない。
別に間接キスが嫌なわけではない。まさかラブラブなカップルがやるようなことを、付き合って二日目のカップルがするとは思わなかっただけだ。ヨルが満足そうだから、なにも言わずに胸の内に秘めておくことにする。
あっという間に俺もヨルも肉まんを完食した。口直しに緑茶を飲んで口の中をスッキリさせる。温かい食べ物と飲み物のおかげで冬の公園にいても寒さをあまり感じなかった。
