悪党だらけの乙女ゲームに転生したけど、×亡しすぎて残機が足りない!(溺愛もあるよ★)

 夏なので、エアコンが効いたホテルで私は昼寝していた。(紅龍様所有の高級ホテル)
 中世設定のはずなのに、大都会だと近未来ってご都合すぎない? とは思いつつ、ベッドの上でコロンコロンしてる。

 窓際ではガルーが新聞を読んでおり、ドアの前では護衛の茨鬼君がチョコンと座っている。
 (最初は部屋の外に立って護衛してたけど、疲れるから室内に呼んだのだ)

 と、サングレが飛び込んできた。

 「しすたぁあああああああああああああああああああ!!」

 ドアの側に居た茨鬼君が蹴とばされていたけど、サングレは泣き喚く。
 また何かヤキモチでも妬いてるのかと、私はどっこいしょと起き上がる。
 するとサングレが抱きついてきて騒いだ。

 「シスター!」
 「何やねん」
 「オッサンみたいな返事しないでくださいよ! 俺にだけ花のような笑顔で返事してください!」

 めんどくせぇええ。と思いつつ話を聞く。 

 「俺、気づいちゃったんです!」
 「何をや」
 「またオッサンが出てる! 俺だけシスターとキスしてないんですよ!!!!」
 「何だ、そんな事か」
 私が呆れると、ガルーが新聞を畳む。

 「気づいてなかったの手前だけだぞ」
 「ガルー! この××××の×××野郎!!」

 サングレが余計に怒りだした。ガルーも殴ろうと拳を構えだした。待てぇい!
 仕方ねぇな……フリーハグならぬフリーキス状態の私の口と頬とデコを差し出した。

 「ほら、好きなところにブチュッとやんなさい」

 タコみたいな口で待機してあげたのに、サングレはベッドに泣き伏した。
 なんでアンタの方が花のような乙女なのよ!
 サングレは、わんわん泣く。
 実は誰よりも甘えんBOMなサングレを知らない茨鬼君は驚いていたけど……。

 「ただ、したいわけじゃないんです! 勿論、したいんですけど、シスターにうっとりされたシチュエーションでしたいんですーッ!」

 め、めんどくせぇ――ッ!
 ガルーも同じことを思ったらしく、「めんどくs……」と言いかけたので口を手で塞いだ。

 「私にうっとりされたシチュエーションって言われてもねぇ~。札束で頬をビンタされたら、うっとりすると思うわよ」
 「それ、俺じゃなくて金の力にうっとりしてるんじゃないですか! 俺の力にうっとりしてくださいよ!」

 エクストラバージンオリーブオイルめんどくせぇ――ッ!(とにかく面倒くさいの形容)

 そしてサングレは、うわんうわん泣く。

 もう! 仕方ないなぁ~! と私はサングレに近づくと、その涙が浮かぶ目蓋にキスをした。
 白くて長い睫毛と、水晶みたいに滲んだ涙が美しい。
 サングレは驚いていたけど、私は腕組みして顔を赤くしながら告げる。

 「きっ、キスされるのは何回もあるけど、私からキスしたのはアンタだけだからね!」
 「……!」

 サングレが驚いていた。
 それから涙目でニコッと笑顔になる。

 「やったぁ……! ボク、しすたぁの初めてをもらっちゃった……!」

 出たな幼児化。また泣くサングレを抱きしめて、よしよしする。

 「しすたぁ~だいすき~」
 「はいはい。私も好きよ」

 ガルーは流石に呆れたのか、窓際で新聞を読み始め、茨鬼君は、よくわかってないままに、笑顔でパチパチと可愛い拍手をするのだった。