悪党だらけの乙女ゲームに転生したけど、×亡しすぎて残機が足りない!(溺愛もあるよ★)

 「ディディ様、処女厨って何ですか?」

 茨鬼君の曇り無き眼(まなこ)に見つめられて、私は引き攣った笑顔を向ける。

 (珠天先生……ッ! 息子さんに性教育ぐらいしておいてくださいっっ!)

 そう思ったけど『処女厨』は性教育では教えないか!

 そもそも茨鬼君といえば紅龍様やガルーらが『殺しますね♥』とウッキウキで暗殺するような人格破綻者に育てられちゃったんだし!

 特に私専用の護衛になってからは、それが顕著で、街で私に軽くぶつかった人の胸倉を掴んで笑顔で『殺しますね♥』と苦無をつきつけるのだから、たまったものじゃない。
 (私が煙幕を使わなければ危ないところだった)

 仮に『珠天先生に聞いてみてごらん』と言ったところで先生も知らないだろう。
 むしろ……

 (脳内想像図)
 珠天先生『処女厨? なんだろうね? 紅龍クンに聞いてみようか!』
 茨鬼君『紅龍様! 処女厨って何ですか?』
 紅龍様『乙女のワタシにセクハラかゴラァ!』ゴスッ!(二人を殴る)

 ……ってなる未来しか見えない!

 仕方ない! 私が説明するしかない!

 「に、ニンゲンにはね、お、雄しべと雌しべ的なものがあってね……」

 私が教会の隅に咲いている野の花で説明するも、茨鬼君はキョトンとしていた。

 「ディディ様! おれ、雄しべも雌しべもありません!」

 雄しべはついとるやろがい! と言いながら股間を指さしかけて私の乙女心()が耐える。

 そうしていると、どっすんどっすんと足音が近づいてきた。

 音の方向を見てみると巨人・珠天先生(でかい)が走ってきていたのだ。
 その後ろには、しぶしぶついてきたであろう、脳内じゃない方の紅龍様が♥
 珠天先生がランチボックスを見せた。

 「ディディさん、茨鬼クン~お昼ご飯、一緒に食べないかい~」

 即座に茨鬼君が「食べないよ!」と反抗期してたけど、彼のお腹は『クゥウウ』と子犬のように鳴いている。
 やだ、かわいい~! なーんて、ほのぼのしていると、珠天先生が私も食事に誘ってくれた。

 先生の巨大ランチボックスこと重箱に詰まった御馳走を教会内で食べていると(アリアは起きないので、そこらへんに転がしつつ、焚火は消してヤキイモは救出した)紅龍様がブツブツ言っている。

 「ワタシ忙しいのに、ナンでオッサンとガキと昼飯してんだか……ブツブツ」

 お言葉ですが、珠天先生と紅龍様、同年代です。(言わないけど)
 そうしてると、紅龍様が私の方を見て妖艶に微笑んだ。

 「……まぁ、ワタシの女は今日も魅力的だがナ」

 エロボイス&メロい表情過ぎておにぎりを吹きかけた。
 抱かれる! 脳内でメチャクチャに抱かれちゃう!
 やだ! この作品、全年齢なのに私の全裸が公開されちゃう!!!!(需要なし)

 とりあえずお礼言わなきゃ! と、私は立ち上がると

 「アザーッス!」

 と高校球児の試合終了風に礼をする。

 紅龍様が残念を通り越して生温かい笑み(諦め)になっていた。
 ちょ、そんな私に色気を求めない仕草、止めてくださいよ~! と、峰 不●子風に投げキッスを紅龍様にする。しかし

 「メシなくなるゾ」

 と、紅龍様はモリモリご飯を食べていた。
 くそ! 私が不●子ちゃんだったなら! と悔やんでいると、茨鬼君がニッコリ笑う。

 「ディディ様のソレ、カワイイですね!」

 そして、ちゅっ、と音をたてて投げキッスを真似してきた。

 うぉぉぉぉぉぉおぉおおおおお!! 美少年の投げキッス!! カーワウィイイ!!
 私がやったよりカワイイ気がするけど気にしない!! 

 ハァハァと鼻血を垂らしかけていると、珠天先生まで「そうだね~。可愛かったね~」と、ちゅっと投げキッスの真似をしてくる。

 うぉぉぉぉぉぉおぉぉぉおおおおおおおおおお!! 子持ち45歳の天然美人おじ……お兄さんのピュアな投げキッス!! 可愛い可愛い!!

 私がキュンキュンしてると、茨鬼君が「そういえば、さっきアリアセンパイがしてたコレって、何ですか?」と、私のほっぺにチュッとキスをしてきた。

 頬に瑞々しく柔らかい感触がして、そこでようやくキスされたことに気づいた私。
 私は思わず「きゃん♥」と嬌声を上げる。
 (実際は『オッギャアア!!』だったけど)

 それを見た珠天先生も「わ~、僕も~」と、茨鬼君とは真逆の頬にキスをした!
 両頬に美少年と美中年のキスが!!!!!!
 (例の如く『オッギャァアアアア!』と声を上げてしまったけど! 親子丼! 親子丼!!)

 そして紅龍様が殺気を漲らせて、ゆらりと立ち上がった。

 「ほ、紅龍様ステイ!」

 私が某バスケ漫画風にディフェンスをフンフンすると、紅龍様はビクッ! としていた。
 でも紅龍様も慣れたもので、茨鬼君、珠天先生、アリア(気絶中)を順番に指さす。

 「オマエ! ワタシがいないと、スーグ若いオトコを味見しやがっテ!」
 「サーセン! もう全キャラをケツで抱く女になった方が皆が幸せかなって!」
 「ワタシのシアワセを引き換えにしてんじゃねぇヨ!」

 ぎゃんぎゃん言ってると、アリアが目を覚まして、のそのそ近づいて来る。
 と、大型犬のように私に背後から抱きつき、ムニャムニャと再び寝てしまう。

 それを見た茨鬼君が「あーっ! アリアセンパイずーるーいー! おれもディディ様をギュッてしたいです!」と走って抱きついてきた! 茨鬼君、柔らかっ! 良い匂いする!

 すると珠天先生まで「ぼくも~」と、トコトコやって来る。
 そして男3人に抱きつかれた私。

 「キャー! 止めて! 私を奪って争わないで!(ニヤケ顔)処女にイケメンのハグ×3はキッツイ!(満更でもない顔)」

 そうすると茨鬼君が、ア ノ 台 詞 を口にした。

 「そういえば紅龍様! 処女厨って何ですか?」

 紅龍様の嫉妬に満ちた怒声が轟いた。

 「乙女のワタシにセクハラかゴラァ!」

 紅龍様の拳で、ゴッ! と鈍い音が茨鬼君の頭から放たれたのだった。