「キャア~!♥紅龍様ー♥さっきの新規ボイス、もう一度お願いしますー♥『ワタシのモノ♥』ってやつぅー! 録音して目覚ましに使いますからァー!♥♥♥」

 紅龍様はユーザーから落とされた回数こそ少ないけど、サイトで公開されてたCVだけで百万回再生された男として名高いのだ。(紅龍様のCV・湯上り旅心地←声優さんの源氏名)

 私が録音機器を探しながら目をハートにして告げると、アリア父と紅龍様が同時に叫ぶ。

 「ヒィィィイイイイイ! ほ、紅龍!? 裏社会のドンとも言われる、あの呉 紅龍!?」
 「黙ってろバカ! ディディ、こいつシバくのはワタシに任せて、オマエは、とっととガキどもを連れてドッカ行ってロ!」

 あざーす! 紅龍様ー! と私は退避する。
 紅龍様は空いた片手をバキバキ鳴らしていた。
 そんな彼に私は頷いてアリアと手を繋いで避難することに……!

 ゲームだったなら今頃、処刑用BGMが流れて紅龍様のお仕置きが始まるはずだ!

 しかしアリアの手は小刻みに震えている。
 それを思うと、アリア父を許せなくて、私はバックステップしながら紅龍様に追加で叫んだ。

 「紅龍様! そういえばそいつ、私に、おブスって言ってきましたァーッ!」

 それを聞いた紅龍様が耳をぴくりと動かす。

 「マジかヨ! 女に言ったら末代まで祟られる単語じゃねーかヨ!」
 「はい! あと短足とかドテカボチャとか言ってきたんですよ! 酷いですよね!」

 虎ならぬ龍の威を借る私にアリア父は「い、言ってねぇし!」と焦っていたけど、紅龍様はアリア父の顎を凄まじい力で掴んでいる。そして静かに告げた。

 「老子弄死你(ラオズーノンスーニー)(ぶっ殺す)」

 凄いブチ切れている!
 ありがとうございます紅龍様! 今日も推しが生み出す血しぶきが描く虹がキレイだわ~!
 そんなこんなで私はガルーとサングレが手招きする告解室にアリアと共に逃げ込んだ。

 「ふう~! こわかったぁ~!」

 鍵をかけてドアを背に、ずるずると座り込む私にガルーが「手前のほうが怖ぇよ……この性悪」と小声で呟いていたけど、気にしない★
 そうして一息ついていると、サングレが泣きながら抱きついてきた。

 「うぇ~ん! シスター! ムチャしすぎです~!」

 ぴえんぴえん泣いてるサングレの頭を撫でていると、ガルーも安堵の溜息をついていた。

 「むぼうな女……。まぁ、そういうのキライじゃねぇけど」
 アンタ本当に八歳児? と思うような歯が浮く台詞を吐いてるガルーの頬をプニプニしていると、アリアが自分の手の中のオモチャの銃を見て、ぽつりと呟いた。

 「……うてなかった」

 そんなアリアにガルーが口笛を吹く。

 「手前、とびだしてっても、この女のあしでまといになるだけだったな」

 ガルーの脇腹をサングレが肘で突いた。

 「ちょっと! やめなよガルーくん! そういう本当のこというの!」

 ガルーとサングレの追撃にアリアが無表情のまま、ず~ん……と落ち込んでいたので、私は彼の肩を叩くと、親指を立てて励ました。