「へ、へえ……」
目の前に座る少年……カーネスから聞いた話は、いかれてる話だった。
ずっと並べた料理見てるだけで、食べもしないで死にそうな顔をしたと思ったら、唐突に自分語りが始まって、「いくら何でも唐突すぎないか、そんなに仲良よくなってない」と正気を疑ったけど、中々にとんでもない内容だ。何か申し訳ない。
でも、まだ会って間もない、それこそ会って二時間くらいしか経ってない人間にするほど、追い詰められているのかもしれない。
だって村ぐるみで子供相手にそんなことをしているのだから。衛兵が出入りする街でそんなことをすれば一発で捕まる。しかし整備が行き届いていないのと同じく、法律も行き届いていないのだろう。
「あの、良ければだけど、この村出て……一緒に働かない? 何かこの村変だよ、子供相手にさぁ……そういうのするの、異常だし?」
村の少年への当たりは、普通にどうかしてる。教育上良くないと思う。少年の感じを見るに、変に患って取り返しつかないところに行きそうだ。少年を連れ出し働かせるのは気が引けるけど、こんな村より移動式屋台でふらふらしている方が健全だ。
それに少年は、私と違って魔力がある。魔獣に近いとか言ってたけど、どこからが本当かなんてわからない。っていうか実際そうだったら、それとなく王都から使者が魔王討伐とかで駆り出されて色々働かせられてるだろうし。
「俺は貴女を燃やしてしまうかもしれませんよ」
「なんで? 人間燃やすの趣味なの?」
「いや……もしそうなったら……と」
「そしたら燃やされるようなこと私がしたってことじゃない? その時はその時でしょ」
食堂で働いてる時、鉄鍋で頭かち割ったるからなと思う客がいた。「お前夜道気をつけろよ、絶対やってやっからな、客は神じゃないから頭勝ち割られたら死ぬんだぞ」と思った。心の中で七万回くらい言った。
でも、あっちは魔法が使える。そんなことをしたら秒で反撃されるからしなかったけど、魔法が使えてたら塩ぶっかけるくらいはしてたと思う。いや、やっぱり鉄鍋で殴ってるな。
「いいんですか? あなたについていっても」
「あーいいよいいよ」
「ずっと?」
「ずっといな」
どうせそのうち反抗期とか来て、「こんな屋台の積み荷なんて引いてらんねえよ! クソババア! 俺はでっかくなって帰ってくるんだよぉ! じゃあな!」とか言って出ていくだろう。
食堂で働いてる時、二軒先の八百屋の息子であるトム君十七歳がそんな感じのことを言って町を出ていった。
その一年後子供とお嫁さんを連れて家に帰って来て、八百屋の店主に張り倒されてぼっこぼこにされて向かいの魚屋に突っ込んで乱闘になった。
あれはまさしく地獄の修羅場だった。
「いいんですか……?」
懐かしんでいると、彼は食い入るように私を見る。
「うん、いいよ。流石にそんな話聞いて、食事終わったね! じゃあね! は出来ないし。好きなだけ付いて来ればいいよ。ほら冷めるから。はよ食べてはよ」
カーネスを急かすと、彼は泣きそうな顔をしながら、スプーンを手に取った。一応、私が働いていた食堂は、人気の店だった。そこで学んだから、味には自信がある。従業員さえなんとかなれば、黒字化できるはずなのだ。
それか転移魔法が違法化され、使用者全員死刑になるとか。
目の前に座る少年……カーネスから聞いた話は、いかれてる話だった。
ずっと並べた料理見てるだけで、食べもしないで死にそうな顔をしたと思ったら、唐突に自分語りが始まって、「いくら何でも唐突すぎないか、そんなに仲良よくなってない」と正気を疑ったけど、中々にとんでもない内容だ。何か申し訳ない。
でも、まだ会って間もない、それこそ会って二時間くらいしか経ってない人間にするほど、追い詰められているのかもしれない。
だって村ぐるみで子供相手にそんなことをしているのだから。衛兵が出入りする街でそんなことをすれば一発で捕まる。しかし整備が行き届いていないのと同じく、法律も行き届いていないのだろう。
「あの、良ければだけど、この村出て……一緒に働かない? 何かこの村変だよ、子供相手にさぁ……そういうのするの、異常だし?」
村の少年への当たりは、普通にどうかしてる。教育上良くないと思う。少年の感じを見るに、変に患って取り返しつかないところに行きそうだ。少年を連れ出し働かせるのは気が引けるけど、こんな村より移動式屋台でふらふらしている方が健全だ。
それに少年は、私と違って魔力がある。魔獣に近いとか言ってたけど、どこからが本当かなんてわからない。っていうか実際そうだったら、それとなく王都から使者が魔王討伐とかで駆り出されて色々働かせられてるだろうし。
「俺は貴女を燃やしてしまうかもしれませんよ」
「なんで? 人間燃やすの趣味なの?」
「いや……もしそうなったら……と」
「そしたら燃やされるようなこと私がしたってことじゃない? その時はその時でしょ」
食堂で働いてる時、鉄鍋で頭かち割ったるからなと思う客がいた。「お前夜道気をつけろよ、絶対やってやっからな、客は神じゃないから頭勝ち割られたら死ぬんだぞ」と思った。心の中で七万回くらい言った。
でも、あっちは魔法が使える。そんなことをしたら秒で反撃されるからしなかったけど、魔法が使えてたら塩ぶっかけるくらいはしてたと思う。いや、やっぱり鉄鍋で殴ってるな。
「いいんですか? あなたについていっても」
「あーいいよいいよ」
「ずっと?」
「ずっといな」
どうせそのうち反抗期とか来て、「こんな屋台の積み荷なんて引いてらんねえよ! クソババア! 俺はでっかくなって帰ってくるんだよぉ! じゃあな!」とか言って出ていくだろう。
食堂で働いてる時、二軒先の八百屋の息子であるトム君十七歳がそんな感じのことを言って町を出ていった。
その一年後子供とお嫁さんを連れて家に帰って来て、八百屋の店主に張り倒されてぼっこぼこにされて向かいの魚屋に突っ込んで乱闘になった。
あれはまさしく地獄の修羅場だった。
「いいんですか……?」
懐かしんでいると、彼は食い入るように私を見る。
「うん、いいよ。流石にそんな話聞いて、食事終わったね! じゃあね! は出来ないし。好きなだけ付いて来ればいいよ。ほら冷めるから。はよ食べてはよ」
カーネスを急かすと、彼は泣きそうな顔をしながら、スプーンを手に取った。一応、私が働いていた食堂は、人気の店だった。そこで学んだから、味には自信がある。従業員さえなんとかなれば、黒字化できるはずなのだ。
それか転移魔法が違法化され、使用者全員死刑になるとか。



