全てが終わると、雲雀は取り戻した聖女の力で破壊された建物や傷ついた人間――つまりは翡翠を――もとに戻した。
意識を取り戻した彼女は、傷の消えた鷲爪の端麗な顔を見て擦り寄って行った。
「鷲爪様! 早く式を執り行いましょう」
「何の話ですか?」
鷲爪は不快感を露わにする。
「え? ですから私と鷲爪様の祝言を……」
「私は〝風祀家の最強の聖女〟と結婚すると言ったまでです」
そう言って、鷲爪は隣の雲雀を見た。
「雲雀さん、私と結婚してくれますか?」
「……はい。ちょうど婚礼の衣装を着ておりますから」
雲雀は頬に涙を伝えて「ふふ」と微笑んだ。
それを見た翡翠は「なんでなのよ!!」と地団駄を踏んで悔しがったが、それ以上罵る言葉が出ないようだった。
彼女にも雲雀の清白で大きな気は感じ取れるのだ。
▶︎▶︎
「あなた方の商売が傾いたのは不正な裏金のせいですね」
飯豊に風祀家の帳簿を調べさせた鷲爪に指摘され、鶴司は顔を青くする。
結局穂邑の資金援助を受ける条件として鶴司は経営から外され、風祀家の三人は帝都から出て行くことになった。
「大丈夫か?」
鷲爪は雲雀の心情を慮る。
彼女は黙ったままどこか悲しげな笑顔を浮かべて頷いた。
双子の妹や育ての両親に家族としての情が完全に無くなったわけではない。けれど近くにいれば思い出したくない事も思い出してしまう。
雲雀にとってのこの十年はそれほど辛い日々だった。
「それより羽生院家の方は大丈夫なのでしょうか」
「さあ、わからないな」
烏頭目が羽生院のどれほどの地位の者だったのかを知る術は無いが、身内を消し去った穂邑への恨みを募らせていることは想像に難くない。
「何故、先生は……羽生院家は、そこまでして聖女の力を欲しがったのですか?」
「噂の域を出ないが……奴らは〝反魂術〟に手を出そうとしているらしい」
「反魂……術?」
反魂とは死者の魂を呼び戻すこと、つまりは死者蘇生の呪術だ。
「もちろん禁忌とされているし、不可能だと思われているが、君の力を使えばあるいは――」
十年前のあの日、ヘビの姿をした烏頭目は確かに一瞬息が止まったようだった。それが息を吹き返したのだ。
雲雀は得体の知れない恐怖に身体を震わせた。
「羽生院が襲ってきたら、君のことは俺が守るよ」
穏やかに微笑みかける鷲爪に、雲雀は否定するように首を振る。
「私が、鷲爪様をお守りします」
そう言って、雲雀は自信に満ち溢れた笑顔を見せる。
鷲爪は愛おしそうに雲雀の肩を抱き寄せた。
了
意識を取り戻した彼女は、傷の消えた鷲爪の端麗な顔を見て擦り寄って行った。
「鷲爪様! 早く式を執り行いましょう」
「何の話ですか?」
鷲爪は不快感を露わにする。
「え? ですから私と鷲爪様の祝言を……」
「私は〝風祀家の最強の聖女〟と結婚すると言ったまでです」
そう言って、鷲爪は隣の雲雀を見た。
「雲雀さん、私と結婚してくれますか?」
「……はい。ちょうど婚礼の衣装を着ておりますから」
雲雀は頬に涙を伝えて「ふふ」と微笑んだ。
それを見た翡翠は「なんでなのよ!!」と地団駄を踏んで悔しがったが、それ以上罵る言葉が出ないようだった。
彼女にも雲雀の清白で大きな気は感じ取れるのだ。
▶︎▶︎
「あなた方の商売が傾いたのは不正な裏金のせいですね」
飯豊に風祀家の帳簿を調べさせた鷲爪に指摘され、鶴司は顔を青くする。
結局穂邑の資金援助を受ける条件として鶴司は経営から外され、風祀家の三人は帝都から出て行くことになった。
「大丈夫か?」
鷲爪は雲雀の心情を慮る。
彼女は黙ったままどこか悲しげな笑顔を浮かべて頷いた。
双子の妹や育ての両親に家族としての情が完全に無くなったわけではない。けれど近くにいれば思い出したくない事も思い出してしまう。
雲雀にとってのこの十年はそれほど辛い日々だった。
「それより羽生院家の方は大丈夫なのでしょうか」
「さあ、わからないな」
烏頭目が羽生院のどれほどの地位の者だったのかを知る術は無いが、身内を消し去った穂邑への恨みを募らせていることは想像に難くない。
「何故、先生は……羽生院家は、そこまでして聖女の力を欲しがったのですか?」
「噂の域を出ないが……奴らは〝反魂術〟に手を出そうとしているらしい」
「反魂……術?」
反魂とは死者の魂を呼び戻すこと、つまりは死者蘇生の呪術だ。
「もちろん禁忌とされているし、不可能だと思われているが、君の力を使えばあるいは――」
十年前のあの日、ヘビの姿をした烏頭目は確かに一瞬息が止まったようだった。それが息を吹き返したのだ。
雲雀は得体の知れない恐怖に身体を震わせた。
「羽生院が襲ってきたら、君のことは俺が守るよ」
穏やかに微笑みかける鷲爪に、雲雀は否定するように首を振る。
「私が、鷲爪様をお守りします」
そう言って、雲雀は自信に満ち溢れた笑顔を見せる。
鷲爪は愛おしそうに雲雀の肩を抱き寄せた。
了

