その時、冥の大地が応えた。大地から巨大な黒蓮が咲き誇り、神稚の雷を飲み込む。

神稚は驚愕の声を上げた。


「なんだこれは……!」


「“冥母の証”」

夜叉丸が低く告げる。


「王妃が命を守る意思を示した時、冥界が応える現象だ」


神稚は剣を抜き、白夜に襲いかかる。
しかし、その刹那。

白夜が初めて声を発した。


「……くるな」


その一言に冥火が爆ぜ、神稚の剣を砕き、腕を焼き、彼は地に倒れる。
雪白は震える手で我が子を抱きしめる。


「ありがとう……あなたが、命を選んでくれたのね」


白夜の声は命の証。

その瞬間、雪白の胸に強い母の愛と決意が溢れた。


夜叉丸が神稚に近づき、影で縛る。


「神界に伝えろ。冥は命を宿し、育み、そして選ぶ。これを否定する者はすべてこの闇に呑まれる」


神稚は影に巻かれ、神界へと送られた。
一方、黒水も裏切りが露見し牢へと送られた。

冥華殿に静寂が戻る。雪白は白夜を抱きしめ、夜叉丸と共に静かに未来を見つめた。