やがて、冥界では初となる新暦の制定式が執り行われた。
冥火が煌めき、凍てつく空気の中にほんのりと暖かさが広がる。
冥の民は、長い死の世界に新しい“時”が生まれたことを喜び、歓声を上げた。
雪白は抱いた白夜とともに、正殿の壇上に立った。
「冥に生きる命のため、私はこの冥の暦を記します」
彼女の声は揺るがなかった。
「この子が笑い、成長する日々を、冥のすべての民と共に刻みたい」
その時。天を裂くような轟音が響いた。
黒雲の裂け目から、神稚の雷が落ち、白夜を狙って一直線に襲いかかる。
「――白夜っ!」



