冥の深奥、冷たく湿った廊下の奥に、黒水はひとり立っていた。

冥の官吏でありながら、その心は闇に染まっていた。

彼は雪白のかつての妹分、燈の死を胸に深く抱えていた。

燈は、人間に命を奪われた。だがその無念は、彼女が生前信じていたものすべてを壊した。

黒水の胸に渦巻くのは、哀しみと嫉妬、そして怒りだった。


「暦などいらぬ。冥は死の国。変わることなく静かであれ」


彼の目は冷たく、何かに苛まれていた。

黒水は神稚と密かに通じ、計画を練る。


「王妃が冥を変えるなど許されぬ。白夜もまた、冥の秩序を乱す禍でしかない」


彼は己の胸に決意を固めた。


「白夜を殺し、冥を元の死の闇に戻す……それが、俺の使命だ」


彼の言葉は冷たく、闇の中でひとり誓われた。