その夜。
冥華殿の中庭に、月の光はなく、冥火だけがほのかに揺れていた。
雪白はひとり、冷たい夜の風を受けながら立っていた。
「白夜を……禍と呼ばせはしない」
心の中で繰り返すその言葉は、決して揺らぐことのない鋼の意志だった。
背後から、静かな足音が近づく。
夜叉丸がそっと彼女の肩に手をかける。
「まだ迷っているのか」
「……怖いのです。大切な命を守りたいのに、また奪われるかもしれない」
雪白の声は震えていた。
夜叉丸は彼女を優しく振り向かせ、額を合わせる。
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