ある夜、雪白は夜叉丸と共に中庭に出た。
冥火がゆらぎ、儀式の余韻を湛えている。

雪白は深く息を吸い、静かに言った。

「白夜が生まれたことで、私は母として、冥の命を紡ぐ者とならねばなりません。
暦を作り、命の記憶を繋ぐために、これからのすべてをこの子と歩みます」

その言葉は、王妃として、母として、未来を生き抜くための強き誓いだった。

夜叉丸は雪白の額に口づけ、そして囁く。

「俺はずっと、貴女の背中を守り、白夜の命を守ります。
この冥の道を共に歩き、必ずや光を咲かせましょう」


月が冥界の空を隠す頃、雪白は小さな白夜を抱いて眠りに落ちていった。

彼女の胸には、静かに燃える決意が志として宿り――
その心は、冥界に新たな命の暦を刻む“燈台”へと灯がともされた。

それは、
冥に咲く小さな花が、大地を変える瞬間のはじまりだった。