夜叉丸は雪白を守る盾となる決意を再び固める。
剣先が神兵を押し返しながらも、その声は雪白へ囁いた。

「産め。産まれる命こそ、冥に新たな歴史を紡ぐのだ」

雪白は涙を浮かべる。痛みと決意の中で、微かに頷いた。



胎児の胎動がさらに強まり、痛みの波が雪白を襲う。

呼吸を整えながら、彼女は覚悟を固めた。
「夜叉丸様……白夜を――」

その瞬間、胎児の産声が小さくも、確かに寝所を震わせた。

雪白は握る手に力を込める。


赤子の産声は、冥界と神界の騒乱を止め、世界のどこかに派手ではない“命の祝福”を届けた。

夜叉丸は雪白を抱きしめ、汗と涙と冥火にまみれて

「……よく、生まれた」

雪白は微笑み、赤子を胸に抱きながら、
「ありがとう……あなたも、ありがとう」

そのまま二人と一人の命は、深い安堵の中に包まれていった。