雪白は呻きながら、胎児を感じた。
「この子を……守りたい」
声は微かでも、その決意は揺らがない。

夜叉丸は冥火を握り締め、雪白を包みこむように言った。
「雪白……命を捨てても、貴女を、白夜を守る」

雪白は彼の腕の中で笑みを浮かべた。
「ありがとうございます……でも私は、命を捨てずに守りたい」

その言葉に、夜叉丸は胸を打たれ、純粋な愛と尊敬が目に見えた。




燈は消え入るように呟いた。
「――ねえ、幸せ?」
その言葉には、長い年月の苦しみ、嫉妬、失われた愛がこもっていた。

雪白は答える。
「はい。私は、夜叉丸様と白夜との命を、この冥の中で大切に紡いでいます」

燈は悲しげな笑みを浮かべ、そして消えていった。
黄泉返しの術は止み、夜叉丸の胸には、新種の責任感が宿った。