静かに部屋の障子が開き、夜叉丸が入って来た。
彼はそっと歩み寄り、雪白の横に膝をついた。

「……夜が深いが、眠りは浅くないか」
声には、王妃を心配する夫としての優しさと、冥王としての静謐さが混在していた。

雪白は微笑み返し、うなずいた。

「あの子の命が育ちつつあるのを感じて……夜叉丸様とあなたの子であることが、嬉しくて」

彼は何も言わず静かに彼女の手を取り、その手を自分の頬に当てた。

「お前の中に命がある……俺の王妃の中に、二人の未来がある。それだけで、冥は変わり始めている」

その言葉は雪白の胸にじんわりと響き、自分がただ“命を宿した器”ではなく、“冥の未来を担う者”であると実感させた。