やがて夜叉丸の影が霞を縛り上げる。

 だが霞は短刀を抜き、叫ぶ。

 

 「姉様さえいなければ、わたくしは誰かに褒められたのに!」

 

 刹那、霞は短刀を雪白の方へ放つ。

 

 しかし、雪白は倒れもせず、毅然と立ち尽くす。

 

 「やめなさい、霞!」

 

 短刀は肩をかすめ、鮮血が光る。

 

 「私の命も、この子の命も、誰にも奪わせはしない。 でも、あなたを殺したくはない」

 

 霞の涙が頬を伝い落ちる。

 

 「どうして……どうしてそんな顔で私を見るの?」

 

 雪白の声は、姉としての慈愛に満ちていた。

 

 「だって――私は、あなたのお姉ちゃんだから」

 

 その言葉に霞は刃を落とし、冥火の結界が彼女を拘束した。

 

 

 医師たちは雪白の傷を癒やし、彼女は再び胎内の命に想いを馳せる。