神火が降り注ぐなか、夜叉丸は雪白を抱きしめた。
「よく言った。ならば、この命に代えてでも――お前を守る」
冥火が再び燃え上がり、夜叉丸と雪白の周囲を包み込む。
その炎が巻き起こす風が、神の結界を打ち破り、
比左古の呪符を焼き尽くした。
「う、あ……!」
比左古は絶叫しながら倒れ込む。霞も呆然と立ち尽くしたまま、その手から短刀を落とす。
朝霧は、唇を噛みながら言った。
「どうして、あなたが……こんな力を……」
「冥の王妃だからです」
雪白は、夜叉丸の腕の中で静かに答えた。
「この冥で、愛され、選ばれた。――その証を、今、ここで刻みます」
式は、改めて厳粛に進められた。
冥の火が夜叉丸と雪白の指に宿り、魂と魂を繋ぐ契りの火となる。
夜叉丸は、彼女の額にそっと口づけた。
「貴様を、我が唯一の妃とする。冥と、この命を懸けて、誓う」
「はい。夜叉丸様……私は、あなたのものです」
その瞬間、冥界全土に冥火が咲いた。
黒き空に、咲き乱れるような輝きが広がり、
冥のあやかしたちが膝をついて二人を讃える。
夜叉丸は雪白の手を取り、こう宣言した。
「冥は、この者と共にある。
彼女こそ、冥を咲かせし、冥の花嫁――雪白だ」



