神選の儀が終わった夜、雪白は屋敷の奥にある納戸部屋に押し込められた。


 「お前のような者が広間をうろついては、霞様に不快な思いをさせる」


 父はそう言ったきり、もう二度と目を合わせなかった。

 その部屋は本来、下働きの女中が使っていた物置。窓はなく、薄暗く、冷たい空気に満ちている。壁にはかつて貼られた祝祭の装飾の名残が剥がれかけており、どこか乾いた、忘れられた空間だった。


 (わたし、ここに閉じ込められるの?)


 思考が凍りつくようだった。

 誰もいない部屋で、雪白は膝を抱えていた。
 白い襦袢が寒さに晒され、身体の芯から震えがくる。
 けれど、暖を取るものなど何ひとつ与えられない。

 侍女もいない。灯りもない。声も届かない。

 ――まるで、存在を“この世から消された”ようだった。