「この者は、俺の妃だ。誰にも、穢させはせぬ!!」


 冥火が彼の手から燃え上がり、周囲の神術を焼き尽くす。
 霞が叫び、比左古が呪符を強引に発動させようとした。


 「やめて……!」


 雪白が一歩、前に出た。その身を守る術もなく、ただ彼らの前に立ちはだかる。


 「わたしは、彼の方に選ばれたわけではありません。けれど、冥を愛しています……夜叉丸様を、愛しています!」


 その声は震えながらも真っ直ぐ通る。


 「……だから、たとえ神に見放されても、私は冥の花として咲いて夜叉丸様のそばにいます」


 涙が頬を伝う。
 けれど、それは悲しみではない。ただ決意の涙だった。