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 婚礼の儀は、冥華殿の奥殿で極めて厳かに始まった。
 冥火の揺らぎとともに、冥の神官たちが祝詞を奏上する。

 あやかしの老王や、冥の使者たちが並ぶなか、
 夜叉丸と雪白が並び立ち、契りの火に誓いを立てようとしていた。


 その瞬間――


 「やめてください!」


 白い光が大広間を切り裂いた。
 神界の神子・朝霧、そして霞、そして比左古の姿があらわになる。


 「冥の王よ! その花嫁は、神の秩序を乱す“穢れ”にございます!」


 朝霧が叫ぶと、霞が続けて声を張った。


 「姉様は、冥の花嫁にふさわしくないのです! 私なら、もっと立派に、神と冥を繋げられる!」


 比左古が呪符を掲げる。
 神界と冥界を繋ぐ禁断の裂け目が開こうとしていた。
 

 「やめてください!」


 雪白が叫ぶも、すでに儀式の結界は乱れ、冥華殿の天井が震え始める。
 神火の光が降り注ぎ、冥の者たちは逃げ惑い始める。

 だが。そんな中で夜叉丸がその場に立ち、低く叫ぶ。