そんなとき――


 「雪白」


 その声が、すぐ後ろから届いた。

 振り返れば、そこには夜叉丸。
 彼もまた、漆黒の礼装に身を包み、堂々たる姿で立っていた。

 けれど、雪白を見つめるその目には、迷いがあった。



 「……似合ってないかしら」


 雪白が目を伏せて尋ねると、夜叉丸はゆっくりと首を振る。


 「似合いすぎて、心がざわめく」

 「え……?」

 「貴様が、遠い存在になってしまいそうでな」