その頃。夜叉丸は、冥火の揺れる間で佇んでいた。


 「――雪白」


 その名を呼ぶと、冥の風が優しく吹いた。


 「貴様が選ばぬのなら、俺が選ぶ」


 冥の君の声が、冥界全土に響いた。


 ◆ ◆ ◆