そしてその瞬間、背後から囁かれた声が、雪白の耳元を突いた。


 「……やっぱり、姉様には何の価値もなかったのですね」


 振り向かずとも、誰の声かは分かっていた。霞だ。

 声は柔らかく、丁寧で、まるで慈しみをこめて語りかけるようだった。


 「でも、気になさらないで。姉様には姉様なりの生き方が、きっとあるはずですから」


 その笑みは、雪白を深く深く切り裂いた。

 言い返したかった。

 けれど、言葉は喉の奥でつかえたまま、ひとつも出てこない。

 (神にさえ……見放された私は)


 胸の奥が、冷たい氷で満たされていくようだった。