祭が終わった夜。

 冥華殿への帰路。月も星もない冥の空の下、夜叉丸は言った。


 「……俺はな、雪白」

 「はい」

 「お前が“ここにいてもいいのか”と怯えていたこと、ちゃんと分かっていた。……けれど、今のお前を見て、俺は誇りに思った」

 「……夜叉丸様」

 「お前は、冥の“顔”だ。冥の“誇り”だ」


 夜叉丸が静かに、雪白の手を取る。

 その手はかつて、恐れと戸惑いで震えていた。
 けれど今は――彼の手の中で、しっかりと力を宿している。


「お前が誇りに咲いた分、俺はそのすべてを守る……貴様の花が散ることがあれば、それは俺の責任だ」

「そんな……散りません。私は、夜叉丸様のそばで、咲き続けたい」


 そのとき、夜叉丸がふいに足を止めた。