「冥の姫が……あんなに強く、美しいとは……」
「これは……天照の神託とは、また別の“力”か?」
誰もが、雪白という存在に目を奪われた。
霞が叫ぶ。
「だ、だまされないで! 姉様は、冥の男に媚びて地位を得た女なのよ!」
だがその言葉に、雪白はただ――ゆっくりと微笑んだ。
「ええ。私は媚びました。頼りました。すがりました。でもそれは、“冥を信じたから”です。私にとっての冥は、闇ではなく、救いだったのです」
霞は何も言い返せず、唇を噛む。
比左古は激しい怒りと混乱のまま、何かの呪を叫ぼうとした。
しかしそのとき――
「それ以上、俺の花嫁に触れるな」
低く、地を這うような声が社殿全体に響き渡った。



