「……夜叉丸さま」

 「なんだ?」

 「わたし、……もう、戻りたくありません。あの家にも、世界にも」

 「戻らせる気などない」

 「ずっと、ここにいても……?」

 「当然だ。貴様は、俺の妃だ。冥華殿の主となるべき存在だ」

 

 雪白は、夜叉丸の手をそっと握った。

 夜叉丸が驚いたように瞳を見開く。

 雪白は微笑んだ。


 「……では、今日から……貴方に“雪白”として、咲いてもいいですか?」


 その言葉に、夜叉丸は僅かに息を呑んだ。

 そして、深く、頷いた。