「“私なんか”などと、二度と口にするな」


 そのまなざしは、怒りではなく、哀しみに満ちていた。


「どれほど孤独だった? どれほど冷たくされた? ……そのすべてを、俺のもとで忘れろ」


 雪白の目に、涙が浮かんだ。


 「……そんなふうに、言ってくれる人……初めてで……」


 夜叉丸はそっと、彼女の頬に手を添えた。


 「ならば、初めてをすべて俺にくれ。怖がらず、俺を見ていろ。……貴様の魂は、俺の半身だ」


 その指先が、そっと雪白の瞼をなぞった。

 まぶたの裏に、再びあの幻――冥の庭、冥花の記憶が蘇る。