名前を口にしたその声に、微かな困惑と哀れみがにじむ。
 神官の視線が、雪白の背に鋭く注がれているのがわかる。


 「……加護の気配はない。何も降りておらぬ」


 瞬間、空気が凍りついた。
 その言葉は、まるで彼女の存在すべてを否定するような宣告だった。


 (え……?)


 思わず顔を上げかけたが、ぎり、と奥歯を噛み締めて耐えた。


 (……そんなはず、ない)


 ずっと願ってきた。信じてきた。神様はきっと見てくれていると。
 けれど、その祈りは、あっけなく打ち砕かれた。


 周囲から、気まずさを押し殺した衣擦れや、かすかなため息が聞こえる。
 そこには、同情も哀れみもない。ただ、落伍者を見る目――“ああ、やはり”という諦念と冷淡さだけだった。