低く、心に響く声。
 その声だけで胸が高鳴るのを、彼女はもう否定しなかった。


 「夜叉丸さま……」


 現れたその姿は、雪白の記憶よりもさらに鮮烈だった。

 黒と銀を基調とした衣。
 黒髪はひとつに結い、額には淡い銀の紋が浮かぶ。
 その姿は、冥の王の名にふさわしい、神秘と威厳をまとっていた。

 だが――彼のまなざしが雪白をとらえた瞬間、わずかに柔らいだ。


 「その姿……よく似合っている」

 「……姿?」


 雪白は思わず自分の身体を見下ろした。