その瞬間――

 何かが、雪白のなかで音を立てて崩れた。

 この世界のどこにもなかった「肯定」が、初めてここにあった。

 家でもなく、神でもなく――あやかしの君が、そう言ってくれた。


 「……わたし……」


 言葉がうまく出なかった。

 でも、胸の奥が熱くて、目が滲んで、身体の力が抜けそうになる。

 夜叉丸の手が、そっと雪白の頬を支えた。

 白い指先が、氷のように冷たくて、それでいて――不思議な安堵があった。


 「冥に来い。俺の世界に、もう一度咲いてみせろ」

 「……そんなこと、できるの……?」

 「できるとも。俺に拒まれぬ限り、誰も貴様を否定できぬ世界だ」


 その言葉に、胸がきゅっと痛んだ。