「……どうして、私のことを……?」

 「お前の魂は、俺が知っているものだ」


 夜叉丸の金の瞳が細められる。


 「幾星霜の時を超えて、ついに辿り着いた。……かつて、俺のもとで咲いていた“冥花の姫”。その魂と、同じ匂いがする」

 「……冥花の姫……」


 その響きに、雪白の心がかすかに揺れた。

 わけもなく、懐かしいような感覚が胸を刺す。


 (……わたし、何かを……忘れてる?)
 

 夜叉丸はふと近づいてきた。

 その距離に、雪白は思わず後ずさる。
 けれど、背中にあたる雪の冷たさが、現実に引き戻した。