「……貴様が、俺の花嫁か」

 その言葉は、まるで闇のなかでひとすじ差し込んだ光のようだった。

 凍りつく夜気のなか、雪白は硬直していた。
 足元の雪が鳴る。けれど、その音さえ遠く、まるで自分だけが別の時の流れに囚われたようだった。


 (……花嫁? 私が、この人の……?)


 金の双眸が、まっすぐに雪白を射抜いている。
 そのまなざしは、夜の底に沈むように深く、何もかも見透かすように澄んでいた。

 怖い。けれど、逃げられない。

 むしろ、ここまでの人生で、誰よりも真っ直ぐに自分を見つめてきたのは――この男だけだった。