―加護なき娘と、冥の君との邂逅―



雪の夜。神殿に鳴り響く鈴の音は、祝福ではなく、雪白にとっては処刑台への足音のようだった。

白衣に身を包んだ少女――雪宮家の嫡女、雪白(ゆきしろ)は、玉砂利の上に膝を折り頭を垂れていた。十四の齢。加護を受ける年を迎え、人生が決まる祭の夜だ。


「名を」


鈴の音が遠のくなか、奥の神座から重々しい声が響く。


「……雪宮、雪白でございます」



声が震えるのを必死に押しとどめながら、雪白は答えた。

けれど、神官の反応は、すぐには返らない。やがて――

「雪白か……」