「ありがと、なにこれ」
「フィナンシェ」
「ふぃなんしぇってなんだっけ?」
「……昴夜、本当に記憶力悪すぎない? ケーキとクッキー以外全部同じだと思ってない?」
「思ってないない」
胡桃が渡してるならちょうどいい、私もこの場で渡してしまおう、とカバンを引っ張る。胡桃は雲雀くんにも「はい、侑生はクッキー!」「……どうも」似たようなラッピングの焼き菓子の詰め合わせを渡した。でも私には桜井くんのフィナンシェのほうが少し豪華に見えた。
「んでフィナンシェってなんだっけ、なんかバター味のふわふわしたやつ?」
「バターのふわふわ……。……そうといえばそうだけど。パティプリの焼き菓子、可愛いでしょ」
「あー、まあ……そうだね……?」
そのリアクションにつられて視線を向けると、桜井くんは「そうだね」なんて顔はしていなかった。桜井くんの性格から分析すれば、その本音は「食えば同じじゃね?」だろう。
そして私にそれが見透かせるということは、胡桃にとってもお見通し。相変わらず可愛らしく膨れっ面をしてみせた。
「あのね、本当はパティプリはクッキーがおいしいの。でも昴夜がクッキー嫌いだからわざわざフィナンシェにしたの。感謝して!」
──カバンの中に突っ込んでいた手を止めた。
「はいはい、ありがとありがと」
「……そんなこと言ってたら来年からあげないよ」
「フィナンシェめっちゃ嬉しい、ありがとう! 大事に食う!」
わざとらしい感謝の言葉に、胡桃はますますしかめっ面だ。でも胡桃のことだから腹を立てることはなく、「仕方ないなあ」程度の感情しかないのだろう。
「じゃ、あたし帰るから。また明日ね」
「またね」
「ばいばーい」
桜井くんはケーキで頬を膨らませて、もごもごと言葉にならない音を発しながら手を振った。雲雀くんは無言だった。
玄関の引き戸が閉まる音が聞こえてから、雲雀くんは「舜、やる」「お、さんきゅ」胡桃から貰ったお菓子を早速荒神くんに押し付けた。ポンッと膝に乗ったそれを受け取り、荒神くんはすぐに袋を開ける。ケーキはもう食べ終えていた。
「……雲雀くんもクッキー嫌いなの?」
「そうじゃないけど」
「三国がいるから他の女子から誕プレ受け取んないんだろ。カーッコイ」
茶化すような、というか現に茶化している荒神くんを、雲雀くんの冷たい双眸がじろりと睨んだ。別にそんなことは気にしなくていいのに……。とはいえ胡桃からの貰い物を食べないのは胡桃に対する感情の問題だろうから、ここはそうフォローする必要はあるまい。
「てか……」
荒神くんは私の手元に視線を向けて、セリフの語尾を濁した。
きっと私が買ったと宣言した二人の誕生日プレゼントのことを言いたいのだろう。渡すなら今じゃないか、と。
でも、桜井くんの誕生日プレゼントに買ってきたのはクッキーだった。しかもよりによってクッキーの複数種類の組み合わせだ。クッキーを嫌いな人がいるなんて思わないし、桜井くんは甘党だから余計に考えもしなかった。
そんなものを渡せるはずがない。誤魔化すために、カバンの中からは携帯電話を取り出した。それを開いてメールを確認するふりをしたけれど、誰からも何も連絡はなかった。
「……私も、ケーキ食べたら片付けて帰ろうかな」
荒神くんはきっと少し反応に困ってしまったと思う。でもすぐに「マージか」と場を繋ぐ。
「俺帰るのめんどいなー、昴夜泊めて」
「いいけど、舜と英凜、方向一緒なんだから舜が一緒に帰ればいいじゃん」
「フィナンシェ」
「ふぃなんしぇってなんだっけ?」
「……昴夜、本当に記憶力悪すぎない? ケーキとクッキー以外全部同じだと思ってない?」
「思ってないない」
胡桃が渡してるならちょうどいい、私もこの場で渡してしまおう、とカバンを引っ張る。胡桃は雲雀くんにも「はい、侑生はクッキー!」「……どうも」似たようなラッピングの焼き菓子の詰め合わせを渡した。でも私には桜井くんのフィナンシェのほうが少し豪華に見えた。
「んでフィナンシェってなんだっけ、なんかバター味のふわふわしたやつ?」
「バターのふわふわ……。……そうといえばそうだけど。パティプリの焼き菓子、可愛いでしょ」
「あー、まあ……そうだね……?」
そのリアクションにつられて視線を向けると、桜井くんは「そうだね」なんて顔はしていなかった。桜井くんの性格から分析すれば、その本音は「食えば同じじゃね?」だろう。
そして私にそれが見透かせるということは、胡桃にとってもお見通し。相変わらず可愛らしく膨れっ面をしてみせた。
「あのね、本当はパティプリはクッキーがおいしいの。でも昴夜がクッキー嫌いだからわざわざフィナンシェにしたの。感謝して!」
──カバンの中に突っ込んでいた手を止めた。
「はいはい、ありがとありがと」
「……そんなこと言ってたら来年からあげないよ」
「フィナンシェめっちゃ嬉しい、ありがとう! 大事に食う!」
わざとらしい感謝の言葉に、胡桃はますますしかめっ面だ。でも胡桃のことだから腹を立てることはなく、「仕方ないなあ」程度の感情しかないのだろう。
「じゃ、あたし帰るから。また明日ね」
「またね」
「ばいばーい」
桜井くんはケーキで頬を膨らませて、もごもごと言葉にならない音を発しながら手を振った。雲雀くんは無言だった。
玄関の引き戸が閉まる音が聞こえてから、雲雀くんは「舜、やる」「お、さんきゅ」胡桃から貰ったお菓子を早速荒神くんに押し付けた。ポンッと膝に乗ったそれを受け取り、荒神くんはすぐに袋を開ける。ケーキはもう食べ終えていた。
「……雲雀くんもクッキー嫌いなの?」
「そうじゃないけど」
「三国がいるから他の女子から誕プレ受け取んないんだろ。カーッコイ」
茶化すような、というか現に茶化している荒神くんを、雲雀くんの冷たい双眸がじろりと睨んだ。別にそんなことは気にしなくていいのに……。とはいえ胡桃からの貰い物を食べないのは胡桃に対する感情の問題だろうから、ここはそうフォローする必要はあるまい。
「てか……」
荒神くんは私の手元に視線を向けて、セリフの語尾を濁した。
きっと私が買ったと宣言した二人の誕生日プレゼントのことを言いたいのだろう。渡すなら今じゃないか、と。
でも、桜井くんの誕生日プレゼントに買ってきたのはクッキーだった。しかもよりによってクッキーの複数種類の組み合わせだ。クッキーを嫌いな人がいるなんて思わないし、桜井くんは甘党だから余計に考えもしなかった。
そんなものを渡せるはずがない。誤魔化すために、カバンの中からは携帯電話を取り出した。それを開いてメールを確認するふりをしたけれど、誰からも何も連絡はなかった。
「……私も、ケーキ食べたら片付けて帰ろうかな」
荒神くんはきっと少し反応に困ってしまったと思う。でもすぐに「マージか」と場を繋ぐ。
「俺帰るのめんどいなー、昴夜泊めて」
「いいけど、舜と英凜、方向一緒なんだから舜が一緒に帰ればいいじゃん」



