ぼくらは群青を探している

 それは荒神くん相手に凶器を持ち出すということ……? あながち冗談にならなさそうな想像をしてしまう私の隣で、雲雀くんは手早くテーブルを片付け始め、桜井くんが最後の餃子を口に放り込む。そして二人はそのまま各自の食器を持って台所に引っ込み「てか餃子の後にケーキってどうなの?」「お前が餃子作ろうって言い出したんだろ」「だってみんなで餃子作ろうって話したじゃん」「だからって今日じゃなくてもいいだろ」ガチャガチャとケーキの準備をする音を立て始めた。

「っていうか二人とも誕生日なんだからそんなに働かなくても」

 慌てて私も片付け始めるけど、台所からは「でも俺がケーキを切ることで俺は一番大きいケーキを食べれる」と聞こえたし、なにより荒神くんに「三国、三国」と小声で呼び止められた。

「なに?」
「三国、もしかして昴夜と侑生に誕プレ買ってる?」
「……一応」

 といってもそんな大層なものを用意したわけではない。現に学校のカバンの中に収まっている程度のものだし……。

 ただ、荒神くんは「マジか……。男同士なんてそんなん用意しないんだよな」としかめっ面なのでどうやら用意していることそれ自体に意味があるらしい。

「……私と連名にする?」
「いや侑生にそれはやめてやれよ。まいーよ、ケーキ食うし」

 それがどう解決に繋がるか分からなかったけれど、ケーキのお金は2人の分を差し引いて払うということだろうか。それならお祝いとして納得できなくはない。

「てか何買ったの?」
「何……ってほど大層なものじゃないんだけど……」

 実は二人の誕生日なんてすっかり頭から抜け落ちていて、昨日慌てて買いに行ったばっかりだった。しかも雲雀くんに至っては人生初の彼氏なんてものなので、一体何をどう選べばいいのか分からずに陽菜に助けを求める始末となった。

 でも、そうだ、荒神くんに検閲(けんえつ)をしてもらえばよかったのだ。二人と仲のいい荒神くんならきっといいアドバイスをくれたに違いない。

 いまさら後悔しながらカバンを手に取り「昨日買ったんだけど……」と中に手を入れようとしたとき、シーソーと玄関チャイムが鳴った。荒神くんが顔を上げる。

「……誰?」
「……胡桃じゃない?」
「こーやー、いるー?」

 ガラガラ、と引き戸の開く音と胡桃の声が聞こえたのが同時だった。また桜井くんが「いるー!」と声だけで返事をする。そしてすぐに舌打ちが聞こえた。

「開いてるし電気ついてるし、いないわけないんだよな」
「そんな名推理できるの、侑生くらいじゃん?」
「サルでも分かるだろこんなの」
「サルってすげーな」

 二人の会話を聞けば、顔は見えなくても、雲雀くんが台所で苛立たし気にしている様子が目に浮かんだ。桜井くんが和ませてあげなければきっと雲雀くんはストレスでハゲているけれど、桜井くんがいなければ胡桃が来ることもない。難しい問題だ。

「昴夜! 誕生日おめでと!」

 そして、胡桃は今日という日に正しい第一声と共に飛び込んできた。時刻は既に8時を回っているというのになぜかまだ制服姿だった。

 その胡桃はテーブルの上にまだ雑多に散らばっているお皿を見て「なにこれ、餃子?」と当たりをつける。でももしかしたら臭いもしているかもしれない……とそっと口元へ手を持って行った。でも今更遅い……? いやみんなで食べてたから互いに臭いに気付く可能性はない……?

「いいなー、あたしも食べたかった。お腹すいちゃった」
「胡桃、飯食ってないの?」