「九十三先輩、私は真面目に――」
「分かってる、分かってるって。あんだけ永人に気に入られてるの、謎過ぎて気持ち悪いもんね」
「いや気持ち悪いとかそこまでは言いませんけど……」
不気味……という感情はちょっと否定できないところがある。自分が無条件に他人に好かれるタイプでないのは分かっているつもりだ。
「まあそんな気にしなくていいんじゃない? あー、でもそっか、この間永人と新庄がどうとか言ってたっけ? んー、永人と新庄はないと思うけどねー。有り得るとしたら三国ちゃんを優先したいとか? そういうことじゃない?」
「……私を優先したいとは……」
「例えば新庄と組まないと三国ちゃんを襲っちゃうよー、とか言われちゃってたり? 俺らなーんも知らないけどね。なくはないよね、永人、三国ちゃん大事だから」
「だからなんで……」
「知ーらないよ。永人が三国ちゃんを大事にしたい理由は知ってるけど、永人が三国ちゃんをどう大事に思ってるのかは知らない。ね、三国ちゃんって、中学校で虐められてたりしたの?」
脈絡のなさそうな、それでいてきっと九十三先輩の中では脈絡のある質問に、つい身構えた。
「……虐めの定義にも、よるかもしれませんけど……別に、ないです。あれですよね、トイレで水をかけられたりとか、牛乳を拭いた雑巾を口の中に入れられたりとか、毛虫の絨毯にダイブさせられたりとかそういう類の……」
「三国ちゃん何の漫画読んでんの? そんな虐めあんの? コワ」
「だから私は虐められたことは特にないです、仲の良くない人から悪口を言われる程度ならありますけど、それはいくらでもあることでしょうし……」
「んー、んー、そうだねー。んじゃ永人にとって何がそんなに心配だったんだろうね?」
首を傾げていると「だからさあ、俺的には、永人が三国ちゃんを特別可愛がる理由は分かるんだよね」と九十三先輩はピンと指を立ててみせる。それでも肩の上の鉄パイプは必要最小限に揺れるだけなので、先輩の屈強さがよく分かった。
「でも、それって群青に入れるほどなの、ってのは|俺|達もわりと疑問だったわけ。まあ昴夜たちが懐いたから群青に入れるしかなかったのかな? それとも永人って三国ちゃんにマジになっちゃったのかな? それにしちゃやり方がまわりくどいし、やっぱり三国ちゃんが心配なのかな?」
「私が心配っていうのは……」
「だって三国ちゃん、体弱いなんて噂あるんだもん」
ゆっくりと目を見開く。私を見下ろす九十三先輩の目はいつもと変わらず「でも嘘、ってか単なる噂かなーって俺らは思ってんだけどね」と私が密かに抱える論点には気づかない。
「ほら、プールでも元気に泳いでるの見たし、体育も普通にやってるし、海も来てるし。今日も元気に走ってたしー、まー噂じゃん噂、勘違いでしょ、って。……え、大丈夫だよね? 弱くないんだよね?」
「……そう、ですね……」
「だーよねえ、じゃなきゃ昴夜たちの遊びに付き合ってるうちに心臓止まってポックリいっちゃうでしょ」
「……その話って」
「あー、雲雀だ雲雀だ。おーい」
……九十三先輩の運が良いのか、私の運が悪いのか。手ぶらで校舎に戻ろうとしている雲雀くんがその声で迷惑そうに振り向き、立ち止まった。多分、私がいなければ立ち止まることまではしなかっただろう、そんな態度だった。
「……どうも」
「お前暇そうじゃん、これ半分持って」
「ヤですけど」
「分かってる、分かってるって。あんだけ永人に気に入られてるの、謎過ぎて気持ち悪いもんね」
「いや気持ち悪いとかそこまでは言いませんけど……」
不気味……という感情はちょっと否定できないところがある。自分が無条件に他人に好かれるタイプでないのは分かっているつもりだ。
「まあそんな気にしなくていいんじゃない? あー、でもそっか、この間永人と新庄がどうとか言ってたっけ? んー、永人と新庄はないと思うけどねー。有り得るとしたら三国ちゃんを優先したいとか? そういうことじゃない?」
「……私を優先したいとは……」
「例えば新庄と組まないと三国ちゃんを襲っちゃうよー、とか言われちゃってたり? 俺らなーんも知らないけどね。なくはないよね、永人、三国ちゃん大事だから」
「だからなんで……」
「知ーらないよ。永人が三国ちゃんを大事にしたい理由は知ってるけど、永人が三国ちゃんをどう大事に思ってるのかは知らない。ね、三国ちゃんって、中学校で虐められてたりしたの?」
脈絡のなさそうな、それでいてきっと九十三先輩の中では脈絡のある質問に、つい身構えた。
「……虐めの定義にも、よるかもしれませんけど……別に、ないです。あれですよね、トイレで水をかけられたりとか、牛乳を拭いた雑巾を口の中に入れられたりとか、毛虫の絨毯にダイブさせられたりとかそういう類の……」
「三国ちゃん何の漫画読んでんの? そんな虐めあんの? コワ」
「だから私は虐められたことは特にないです、仲の良くない人から悪口を言われる程度ならありますけど、それはいくらでもあることでしょうし……」
「んー、んー、そうだねー。んじゃ永人にとって何がそんなに心配だったんだろうね?」
首を傾げていると「だからさあ、俺的には、永人が三国ちゃんを特別可愛がる理由は分かるんだよね」と九十三先輩はピンと指を立ててみせる。それでも肩の上の鉄パイプは必要最小限に揺れるだけなので、先輩の屈強さがよく分かった。
「でも、それって群青に入れるほどなの、ってのは|俺|達もわりと疑問だったわけ。まあ昴夜たちが懐いたから群青に入れるしかなかったのかな? それとも永人って三国ちゃんにマジになっちゃったのかな? それにしちゃやり方がまわりくどいし、やっぱり三国ちゃんが心配なのかな?」
「私が心配っていうのは……」
「だって三国ちゃん、体弱いなんて噂あるんだもん」
ゆっくりと目を見開く。私を見下ろす九十三先輩の目はいつもと変わらず「でも嘘、ってか単なる噂かなーって俺らは思ってんだけどね」と私が密かに抱える論点には気づかない。
「ほら、プールでも元気に泳いでるの見たし、体育も普通にやってるし、海も来てるし。今日も元気に走ってたしー、まー噂じゃん噂、勘違いでしょ、って。……え、大丈夫だよね? 弱くないんだよね?」
「……そう、ですね……」
「だーよねえ、じゃなきゃ昴夜たちの遊びに付き合ってるうちに心臓止まってポックリいっちゃうでしょ」
「……その話って」
「あー、雲雀だ雲雀だ。おーい」
……九十三先輩の運が良いのか、私の運が悪いのか。手ぶらで校舎に戻ろうとしている雲雀くんがその声で迷惑そうに振り向き、立ち止まった。多分、私がいなければ立ち止まることまではしなかっただろう、そんな態度だった。
「……どうも」
「お前暇そうじゃん、これ半分持って」
「ヤですけど」



