「や、だから初耳だよ。何年も会ってないとしか聞いてないから、俺は。三国ちゃんが妹とだぶってるんじゃないっていうのは思ってたことだけど」
「……死んだことの婉曲表現」
「そうかもね。でも……両親が離婚して会ってないとか、その程度な気がするんだけどな。その程度って言っちゃいけないけど」
ふーっと煙を吐き出しながら、能勢さんも首を捻る。
「でも一応元カノだから話は永人さんから聞いたんだろうし……本当にそうなのかな」
「……仲良かったんですか? 蛍さんと元カノさん」
「どうだろ、学校で話してるのは見かけたけど。基本永人さんは群青にべったりだからね」
「……桜井くんと胡桃みたいな」
「ああ、そうそう、そんな感じかも。曽根先輩はあそこまで露骨っていうか、居場所取りに来る感じじゃなかったけどね。用事あるフリしてたまに来るけど、フリなのが見え見えっていう可愛らしい人だよ」
最後の一言が余計だった。日頃女子に対して、というか人に対してどういう目を向けているかがよく分かる。
「そういえば、桜井くんと胡桃ちゃんは結局どうなの、付き合ってるの」
……“結局”って、どういう意味なんだろう。“結局”というのは、なにか過程の積み重ねがあって辿り着く結論を求めるものだ。桜井くんと胡桃には――私にはないけど――その積み重ねがあるのだろうか。
「……なんで私に聞くんですか?」
「いま話が出たから聞いてみただけ。三国ちゃんと雲雀くんの噂もあったことだし」
「だからそれは……」
「でも雲雀くんが三国ちゃんのこと好きなのは本当でしょ?」
不意打ちに、ドッ、と心臓が跳ねた。その振動が塀越しに伝わってしまったかのように、能勢さんは煙草を咥えたまま微かに笑う。
「あのね、いくら優しいって言ったって、好きでもない女の子のために誰かを殴る男なんていないから。そりゃ女の子相手に手を上げただの、乱暴しただのってなれば話は別だけど。あの笹部くん、三国ちゃんにフラれた腹いせに喚き散らしただけでしょ、そんな相手殴るなんて、告白してるようなもんだから」
公開告白って噂はあながち的外れなものじゃないんだよ、と。
「で、その反応ってことは? 三国ちゃんもさすがに気付いてた?」
「……気付きません、でした」
本当は気付いてたと見栄を張りたかったけれど、そんなものは能勢さんには見透かされてしまう気がした。
「過去形ってことは? 告白された?」
「……そう、です、けど……」
ほら、やっぱり。そうやって細かい言葉選びから本当を見透かすんだから。
能勢さんは煙草を指に挟んだ手を口へと運ぶ。その表情のうち、口元が覆い隠された。
「返事してないの?」
「……なんで分かるんですか?」
「だって今日、三国ちゃんと雲雀くんが話すの、全然見てないから。不自然なくらいお互いに避けてるでしょ」
そもそも赤組と青組だし、例によって噂もあるわけだし、下手にさらなる誤解を与えないようにと懸念して一緒にいないことも充分に考えられるはずだった。でも、まるでその反論を潰すかのように「ま、噂を気にしてるのかなと思ったけど、あんだけ三国ちゃんが周りから言われてるの見たら、雲雀くんなら飛んでくるでしょ。告白した後でそういう恩着せがましいことしたくないんだろうね、あの雲雀くんは」私だけでなく雲雀くんのことまで見透かして、私に、そんなことを教える。
「なんで付き合わないの? 嫌いじゃないでしょ、雲雀くんのこと」
「……死んだことの婉曲表現」
「そうかもね。でも……両親が離婚して会ってないとか、その程度な気がするんだけどな。その程度って言っちゃいけないけど」
ふーっと煙を吐き出しながら、能勢さんも首を捻る。
「でも一応元カノだから話は永人さんから聞いたんだろうし……本当にそうなのかな」
「……仲良かったんですか? 蛍さんと元カノさん」
「どうだろ、学校で話してるのは見かけたけど。基本永人さんは群青にべったりだからね」
「……桜井くんと胡桃みたいな」
「ああ、そうそう、そんな感じかも。曽根先輩はあそこまで露骨っていうか、居場所取りに来る感じじゃなかったけどね。用事あるフリしてたまに来るけど、フリなのが見え見えっていう可愛らしい人だよ」
最後の一言が余計だった。日頃女子に対して、というか人に対してどういう目を向けているかがよく分かる。
「そういえば、桜井くんと胡桃ちゃんは結局どうなの、付き合ってるの」
……“結局”って、どういう意味なんだろう。“結局”というのは、なにか過程の積み重ねがあって辿り着く結論を求めるものだ。桜井くんと胡桃には――私にはないけど――その積み重ねがあるのだろうか。
「……なんで私に聞くんですか?」
「いま話が出たから聞いてみただけ。三国ちゃんと雲雀くんの噂もあったことだし」
「だからそれは……」
「でも雲雀くんが三国ちゃんのこと好きなのは本当でしょ?」
不意打ちに、ドッ、と心臓が跳ねた。その振動が塀越しに伝わってしまったかのように、能勢さんは煙草を咥えたまま微かに笑う。
「あのね、いくら優しいって言ったって、好きでもない女の子のために誰かを殴る男なんていないから。そりゃ女の子相手に手を上げただの、乱暴しただのってなれば話は別だけど。あの笹部くん、三国ちゃんにフラれた腹いせに喚き散らしただけでしょ、そんな相手殴るなんて、告白してるようなもんだから」
公開告白って噂はあながち的外れなものじゃないんだよ、と。
「で、その反応ってことは? 三国ちゃんもさすがに気付いてた?」
「……気付きません、でした」
本当は気付いてたと見栄を張りたかったけれど、そんなものは能勢さんには見透かされてしまう気がした。
「過去形ってことは? 告白された?」
「……そう、です、けど……」
ほら、やっぱり。そうやって細かい言葉選びから本当を見透かすんだから。
能勢さんは煙草を指に挟んだ手を口へと運ぶ。その表情のうち、口元が覆い隠された。
「返事してないの?」
「……なんで分かるんですか?」
「だって今日、三国ちゃんと雲雀くんが話すの、全然見てないから。不自然なくらいお互いに避けてるでしょ」
そもそも赤組と青組だし、例によって噂もあるわけだし、下手にさらなる誤解を与えないようにと懸念して一緒にいないことも充分に考えられるはずだった。でも、まるでその反論を潰すかのように「ま、噂を気にしてるのかなと思ったけど、あんだけ三国ちゃんが周りから言われてるの見たら、雲雀くんなら飛んでくるでしょ。告白した後でそういう恩着せがましいことしたくないんだろうね、あの雲雀くんは」私だけでなく雲雀くんのことまで見透かして、私に、そんなことを教える。
「なんで付き合わないの? 嫌いじゃないでしょ、雲雀くんのこと」



