ぼくらは群青を探している

 そんなことをしているうちに「あれ、三国ちゃんの兄貴じゃね」先輩の一人が歩いてくるお兄ちゃん達を見つけ「やべー、三国にヤンキーが絡んでると勘違いされる」「間違ってねーだろ」「確かに」「じゃーね、三国ちゃん」と行ってしまった。お兄ちゃん達にはすれ違いざま「どーもー」「お宅の三国ちゃんのお世話してます」「いやされてる側じゃね」と笑いながら絡んでいた。あの兄の妹としてもあの先輩達の後輩としてもなんだか複雑な気持ちになった。
 それを眺める私の隣で、不意に桜井くんが「てか英凜、海は大丈夫なの?」なんて口にする。

「大丈夫って?」
「んーと、あれ。写真」

 ショッピングモールだと頭痛がするというのは海にも当てはまるのではないか、という話だろう。でも“写真”なんて言われただけでは、知っている人以外、意味は分かりっこない。実際、そのキーワードに胡桃はこてんと首を傾げた。それが桜井くんの気遣いなのは明白で、それなのになにかの暗号のように聞こえて笑ってしまった。

「うん、景色は大丈夫」
「そ? よかったよかった」
「なに、英凜、写真撮りたかったの? 夏休み明けたら現像したのあげるね」
「ありがと」

 本当に暗号みたいだ。まるで私と桜井くんで秘密を共有できたように。
 でもこの秘密は雲雀くんも知ってるものだ。そう考えると、これは私達3人の秘密──特別というべきかもしれない。
 そんな話をしているうちにお兄ちゃんと京くんが来てしまって「昼飯のときの友達か」「おにーさんどーもー。じゃあねー、英凜」「じゃあな」と軽く挨拶をして行ってしまった。京くんはさっきすれ違った先輩達のせいもあってやはり(おび)えていた。

「……英凜ちゃんって灰桜高校でなにしてんの? さっきの怖い人達もみんな三国三国言うし」
「……でも駿くんも気に入られてたくさん遊ばれてたよ」
「楽しかった」
「駿くんはほら、なんでも吸収する年だしさあ……」
「てか英凜、友達多くね」
「8割以上先輩だよ」
「同じじゃね」

 同じ、だろうか。はて、とお兄ちゃんの指摘に首を捻る。同じ……、同じだろうか。
 おばあちゃんの家に帰ると、京くんは「アンタ、もう帰るんだからそのまま車乗りなさい。後ろにバスタオル敷いて」と言われ、薫子お姉さんが「駿哉、海入ったの!?」「英凜ちゃんの先輩に遊んでもらった」と駿くんの濡れた服に仰天(ぎょうてん)していた。

「いや英凜の先輩、マジでやべーよ。世紀末のヤンキー集めましたって感じだった」
「別に悪いのは見た目だけだし……」
「見た目が悪いのは否定しないんだ。……否定できないよね、うん」

 ドン引きしている叔母さん達と白い目の京くんの隣で、おばあちゃんが「うちにも遊びに来るよ、雲雀くんと桜井くん。この間はお夕飯も食べて行って、桜井くんが料理上手でねえ」と余計なことを口走る。でも駿くんが「海に投げてもらった」「カニを取った」「フリスビーもした」と楽しそうに報告していたので、きっとお母さんに変な伝わり方はしないだろう。
 その駿くんと一緒に、夕飯前にお風呂に入りながら「そういえば、雲雀くんが駿くんに謝っといてだって」と雲雀くんからの伝言を口にした。駿くんは全く身に覚えがなさそうにきょとんと目を丸くする。

「謝るとは」
「ごめんねって。八つ当たりしちゃったからって」
「それならもう言われた」
「そうなの?」
「荷物を片付けてるときに、(うらや)ましかったから意地悪(いじわる)を言った、悪かったと」