雲雀くんなりに「嫌い」を前面に出さないための最大限の配慮なのだろう。そしてその配慮はちゃんと奏功しているらしい。「そう……かな……?」 お陰で反応には困った。
「でも普段すごくクールだから、不意に笑われるとドキッとするよね。意外と無邪気で可愛い感じの笑い方」
脳裏にはつい2日前の出来事が浮かぶ。普段無愛想だからそう思えるのだろうか、本当に意外と可愛く笑う。こんなことを思っていると知られたら馬鹿にしていると勘違いされてしまいそうなので言えないけれど。
「え、あたし侑生が笑ったとこ見たことない」
「……私も2回くらいしかないから」
「やっぱ侑生、英凜のことは好きなんだろうなー。なんかあたしとはあんま仲良くなる気なさそうなの感じるし」
雲雀くんの配慮は奏功している、という結論を半分だけ撤回することにした。なんとなく気付かれている。
「好きといえば、夏祭りのとき、笹部がごめんね? 昔、英凜がフッたんだって?」
「……いや本当にこっちこそごめんなさい」
その話……。海の上でなければ額を押さえていた。桜井くんがクソダエェとか言わなければ、いや私が笹部くんをイケメンだと褒めていれば……? 会話のかみ合わせがどうズレていればよかったのかは分からないけど、少なくとも最悪のかみ合わせだったことには間違いない。
「笹部ねー、言われてみれば、クラスでも英凜の話してたんだよね。あたしが5組行った話したら『三国も5組だよな』とか。結構仲良いって言ってたんだけど、なんかねー、なにかあるんだろうなーと思ってスルーしてたんだけど。まさかフラれてたなんて」
なぜその発言だけで笹部くんと私の間に何かがあると分かるのか。あまりにも摩訶不思議な論理関係に首を捻った。いや、胡桃はちゃんと感じることができるだけで、そこには論理なんてないのかもしれない。
「でもなんでフッちゃったの? 仲良かったんでしょ?」
「……仲、良かったのかな」
やっぱり笹部くん側からはそういう認識らしい、と聞かされて頭痛がした。
「笹部くんと2人で遊ぶような仲じゃなかったし……。桜井くんとか雲雀くんは、ほら、2人でも一緒にいることはあるけど」
「え、侑生も?」
「実際になったことは多分ないけど、夏祭りとかで2人で放り出されても困らないとは思う。笹部くんは多分会話に困る」
どちらかというと、雲雀くんは顔以外が男っぽすぎて、その意味で微妙に緊張する感じはある。桜井くんがいかにも同級生の「精神年齢ちょっと低めの男子」であるのに対して、雲雀くんは同級生なのに大人びすぎている。両親が離婚しているという事実が、雲雀くんをそこまで達観した性格にしてしまったのだろうか。ともあれ、最近雲雀くんの近くにいると落ち着かないのはそのせいな気がしてきた。
「んー、そっか。でもそうかも、笹部、野球の話しかしないしね」
「……胡桃とも野球の話するの?」
「あたしはお兄ちゃんが野球部だったから、見るのは好きなんだよね」
そっか、胡桃にもお兄さんがいる話は桜井くん達から聞いていたな。確か指定校推薦枠で早稲に入ったと。胡桃のお兄さんだからきっとイケメンなのだろう。
「っていうか、笹部と英凜ってそんなに話合わなかったの? ヤバ。それで告白する笹部もどうなの」
私はそう思うのだけれど、笹部くんと話が合わないというのは私の主観らしいし、難しいところだ。私から話を聞けば、胡桃は私を正しいと言うし、きっと笹部くんや川西くん達から話を聞けば、胡桃は私を間違っていると言うのだろう。
「でも普段すごくクールだから、不意に笑われるとドキッとするよね。意外と無邪気で可愛い感じの笑い方」
脳裏にはつい2日前の出来事が浮かぶ。普段無愛想だからそう思えるのだろうか、本当に意外と可愛く笑う。こんなことを思っていると知られたら馬鹿にしていると勘違いされてしまいそうなので言えないけれど。
「え、あたし侑生が笑ったとこ見たことない」
「……私も2回くらいしかないから」
「やっぱ侑生、英凜のことは好きなんだろうなー。なんかあたしとはあんま仲良くなる気なさそうなの感じるし」
雲雀くんの配慮は奏功している、という結論を半分だけ撤回することにした。なんとなく気付かれている。
「好きといえば、夏祭りのとき、笹部がごめんね? 昔、英凜がフッたんだって?」
「……いや本当にこっちこそごめんなさい」
その話……。海の上でなければ額を押さえていた。桜井くんがクソダエェとか言わなければ、いや私が笹部くんをイケメンだと褒めていれば……? 会話のかみ合わせがどうズレていればよかったのかは分からないけど、少なくとも最悪のかみ合わせだったことには間違いない。
「笹部ねー、言われてみれば、クラスでも英凜の話してたんだよね。あたしが5組行った話したら『三国も5組だよな』とか。結構仲良いって言ってたんだけど、なんかねー、なにかあるんだろうなーと思ってスルーしてたんだけど。まさかフラれてたなんて」
なぜその発言だけで笹部くんと私の間に何かがあると分かるのか。あまりにも摩訶不思議な論理関係に首を捻った。いや、胡桃はちゃんと感じることができるだけで、そこには論理なんてないのかもしれない。
「でもなんでフッちゃったの? 仲良かったんでしょ?」
「……仲、良かったのかな」
やっぱり笹部くん側からはそういう認識らしい、と聞かされて頭痛がした。
「笹部くんと2人で遊ぶような仲じゃなかったし……。桜井くんとか雲雀くんは、ほら、2人でも一緒にいることはあるけど」
「え、侑生も?」
「実際になったことは多分ないけど、夏祭りとかで2人で放り出されても困らないとは思う。笹部くんは多分会話に困る」
どちらかというと、雲雀くんは顔以外が男っぽすぎて、その意味で微妙に緊張する感じはある。桜井くんがいかにも同級生の「精神年齢ちょっと低めの男子」であるのに対して、雲雀くんは同級生なのに大人びすぎている。両親が離婚しているという事実が、雲雀くんをそこまで達観した性格にしてしまったのだろうか。ともあれ、最近雲雀くんの近くにいると落ち着かないのはそのせいな気がしてきた。
「んー、そっか。でもそうかも、笹部、野球の話しかしないしね」
「……胡桃とも野球の話するの?」
「あたしはお兄ちゃんが野球部だったから、見るのは好きなんだよね」
そっか、胡桃にもお兄さんがいる話は桜井くん達から聞いていたな。確か指定校推薦枠で早稲に入ったと。胡桃のお兄さんだからきっとイケメンなのだろう。
「っていうか、笹部と英凜ってそんなに話合わなかったの? ヤバ。それで告白する笹部もどうなの」
私はそう思うのだけれど、笹部くんと話が合わないというのは私の主観らしいし、難しいところだ。私から話を聞けば、胡桃は私を正しいと言うし、きっと笹部くんや川西くん達から話を聞けば、胡桃は私を間違っていると言うのだろう。



