その間にパッケージを開いてもう少し詳しいあらすじを見た。兄を亡くし、両親からも冷遇されている主人公のゴーディ、賢いけど家庭環境が悪いクリス、父親の虐待を受けているテディ、太って鈍間で不良の兄を持つバーン……。家族関係の複雑さからシンパシーを抱いて一緒にいる4人組、そんな括り方をすると、急に私達に近いものがある気がしてくる。つまらないかと思ったけど、存外面白いかもしれない。
「英凜、DVDとって」
「ん」
ディスクを渡す後ろで、雲雀くんがいなくなる気配がした。ガチャリと扉の音も聞こえたからトイレにでも行ったのだろう。
「……そういえば、桜井くんのお父さん、お盆は帰ってくるの?」
「んー、うん、らしいよー。さすがにケータイ買ってくれって言おうと思う、一昨日マジで困ったし」
桜井くんは、もしかして真っ先に駆け付けられなくて悪かったと思っているのだろうか。今まで蛍さんに散々言われてもその必要性を理解していなかったのだから、それ以外に心境の変化を理由づけるものはない。雲雀くんの家に来る前に「助けたのは侑生じゃん」と言ったときの笑みも、罪悪感からくる自嘲の笑みだったとすれば説明がつく。
「……桜井くんが来てくれたの、全然遅くなかったよ」
「俺がケータイ持ってたら、連絡したの俺だった?」
「え」
もっと早ければよかったとか、そういった類の返答があるとばかり思っていたので素っ頓狂な声が出てしまったし「どうなんだろう……」とつい口にしながら考え込んでしまった。桜井くんはDVDを再生する準備をしていて、顔は見えなかった。
「急いでたから履歴からかけたんだけど……だから、桜井くんから電話かかってることあったらそうだったかな……」
そもそもほとんど電話なんてかかってこないし、おばあちゃんとの電話は私から電話をかけるので着信履歴には残っていない。結果、私の着信履歴は9割雲雀くん、1割群青の先輩だ(あの人達は面倒くさがりなのか、すぐに電話で呼び出そうとする)。しかも9割といったって、雲雀くんからかかってくる電話の半分は雲雀くんの携帯電話を借りた桜井くんだし、いずれにしても「今日あそぼ―」というだけだし、私が個人的に雲雀くんと電話でお喋りをしているわけではない。
そう考えると、桜井くんが携帯電話を持っていたら、通話履歴の一番上は桜井くんだった可能性もある。そこの確率は2分の1だろう。
「でも桜井くんと雲雀くん、一緒にいたわけだし、連絡するのが桜井くんでも来れたタイミングは一緒だったんじゃないかな」
桜井くんは黙った。それはそうだなと納得しているのだろう。リモコンを持ってソファに戻り、そのままポフンと沈み込む。
「……そうだな」
その桜井くんの返事の微妙なニュアンスに疑問を抱いたのは一瞬で、扉の開く音とキッチンからの食器の音でソファを立つ羽目になった。また雲雀くんが働いている。今度は何をし始めたのかと思ったらヤカンがコンロに載っていた。
「……雲雀くんって働き者なの?」
「普通じゃね。前回俺の饅頭に三国がお茶沸かしたから」
「だから今日は雲雀くんのお見舞いで……」
「んじゃお茶淹れて。淹れたことない」
……言われてみれば、私はおばあちゃん、桜井くんはおじいちゃんと一緒に暮らしていたから日常的に緑茶が出てくるし、自分でも淹れるけれど、普通の男子高校生は急須なんて持ったことない人のほうが多いだろう。九十三先輩なんて(完全な偏見だけれど)、湯飲みにそのまま茶葉を入れても不思議ではない。
「英凜、DVDとって」
「ん」
ディスクを渡す後ろで、雲雀くんがいなくなる気配がした。ガチャリと扉の音も聞こえたからトイレにでも行ったのだろう。
「……そういえば、桜井くんのお父さん、お盆は帰ってくるの?」
「んー、うん、らしいよー。さすがにケータイ買ってくれって言おうと思う、一昨日マジで困ったし」
桜井くんは、もしかして真っ先に駆け付けられなくて悪かったと思っているのだろうか。今まで蛍さんに散々言われてもその必要性を理解していなかったのだから、それ以外に心境の変化を理由づけるものはない。雲雀くんの家に来る前に「助けたのは侑生じゃん」と言ったときの笑みも、罪悪感からくる自嘲の笑みだったとすれば説明がつく。
「……桜井くんが来てくれたの、全然遅くなかったよ」
「俺がケータイ持ってたら、連絡したの俺だった?」
「え」
もっと早ければよかったとか、そういった類の返答があるとばかり思っていたので素っ頓狂な声が出てしまったし「どうなんだろう……」とつい口にしながら考え込んでしまった。桜井くんはDVDを再生する準備をしていて、顔は見えなかった。
「急いでたから履歴からかけたんだけど……だから、桜井くんから電話かかってることあったらそうだったかな……」
そもそもほとんど電話なんてかかってこないし、おばあちゃんとの電話は私から電話をかけるので着信履歴には残っていない。結果、私の着信履歴は9割雲雀くん、1割群青の先輩だ(あの人達は面倒くさがりなのか、すぐに電話で呼び出そうとする)。しかも9割といったって、雲雀くんからかかってくる電話の半分は雲雀くんの携帯電話を借りた桜井くんだし、いずれにしても「今日あそぼ―」というだけだし、私が個人的に雲雀くんと電話でお喋りをしているわけではない。
そう考えると、桜井くんが携帯電話を持っていたら、通話履歴の一番上は桜井くんだった可能性もある。そこの確率は2分の1だろう。
「でも桜井くんと雲雀くん、一緒にいたわけだし、連絡するのが桜井くんでも来れたタイミングは一緒だったんじゃないかな」
桜井くんは黙った。それはそうだなと納得しているのだろう。リモコンを持ってソファに戻り、そのままポフンと沈み込む。
「……そうだな」
その桜井くんの返事の微妙なニュアンスに疑問を抱いたのは一瞬で、扉の開く音とキッチンからの食器の音でソファを立つ羽目になった。また雲雀くんが働いている。今度は何をし始めたのかと思ったらヤカンがコンロに載っていた。
「……雲雀くんって働き者なの?」
「普通じゃね。前回俺の饅頭に三国がお茶沸かしたから」
「だから今日は雲雀くんのお見舞いで……」
「んじゃお茶淹れて。淹れたことない」
……言われてみれば、私はおばあちゃん、桜井くんはおじいちゃんと一緒に暮らしていたから日常的に緑茶が出てくるし、自分でも淹れるけれど、普通の男子高校生は急須なんて持ったことない人のほうが多いだろう。九十三先輩なんて(完全な偏見だけれど)、湯飲みにそのまま茶葉を入れても不思議ではない。



